今年の春闘は12日、金属労協系の大企業を中心にした集中回答日を迎えた。物価高騰や人手不足を背景に、昨年に続く高水準の回答が相次ぎ、賃上げ機運を盛り上げた。
自動車では、トヨタ自動車が労組の「最高水準」の賃上げ要求に5年連続の満額で応じた。ただ、平均賃金の引き上げ額は公表していない。ダイハツ工業も月2万1200円(定期昇給とベースアップの合計)の要求に満額回答。一方、日産自動車は1万8000円の要求に対して、1万6500円で回答。三菱自動車も1万9000円要求に1万7000円で回答した。
電機では、各労組がベア相当分として1万7000円を求めていたが、日立製作所、NEC、富士通は満額回答、三菱電機は1万5000円。重工では、三菱重工業、川崎重工業、IHIともベア1万5000円の満額回答だった。
一方、12日以前に回答した企業もあり、自動車部品大手のデンソーは過去最高の月2万3500円、牛丼チェーン「すき家」を展開する外食大手のゼンショーホールディングスは要求を上回るベア平均7.68%で回答している。
連合によると、昨年は5.10%と33年ぶりの高い賃上げ率を実現した。しかし、その流れが中小・零細企業にまでは及ばず、賃金より物価上昇が先行。厚生労働省の毎月勤労統計では昨年11、12月に実質賃金がようやくプラス転換したものの、今年1月には再びマイナスに沈むなど、賃上げの勢いは力強さを欠いている。
このため、連合は今春闘で平均5%以上、中小企業は6%以上の賃上げ目標を掲げてきた。大企業がこの日、相次ぎ打ち出した「満額回答」が今後の賃上げ相場にどの程度影響を与えるか、これからが正念場だ。