2025年春闘が本格化するなか、都道府県ごとに行政と労使代表が集まって意見を交わす「地方版政労使会議」が各地で開かれている。同会議体は「働き方改革」の課題解決に向けて15年に設置されたが、昨年度から「持続的な賃上げ」を主要テーマに全国で展開中。東京労働局(富田望局長)で29日に開催された東京都「地方版政労使会議」(東京労働懇談会)には、鰐淵洋子厚生労働副大臣や小池百合子都知事らが出席し、労使代表と持続的な賃上げの環境整備に向けて意見交換した=写真・上。
冒頭、富田局長は「価格転嫁を含めた賃上げ原資の確保に関する課題や最低賃金の引き上げについて積極的に意見交換し、春闘交渉前に政労使の意思疎通を図りたい」と挨拶。鰐淵副大臣が「コストカット型経済から賃上げを起点とした成長と分配の好循環による成長型経済を実現するチャンスを迎えている。このチャンスをつかみ取るためにも、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現が重要」と強調。「賃上げが経済成長の必要不可欠な要素であり、原動力であるという認識を政労使で共有したい」と呼び掛けた。小池都知事は「政労使が力を合わせ、東京の力、そして人の力をもっともっと引き出し、人が輝き活力あふれる都市であり続けたい」と述べた。
使用者側の東京経営者協会の冨田哲郎会長は、昨年の33年ぶりの大幅な賃上げの流れを定着させる年であるとしたうえで、「7割を占める中小企業労働者と4割の有期雇用労働者の賃金引き上げが重要。中小企業は採用難から人材の流出防止や物価上昇の影響を背景に必ずしも業績が改善していないにもかかわらず賃金を引き上げた企業があり、この形は持続可能とは言えない」と指摘し、適正な価格転嫁と販売価格アップの実現が不可欠との認識を示した=写真・下。
労働者側の連合東京の斉藤千秋会長は、若年層に偏重した賃上げや就職氷河期と言われる現在のミドル層への配分が少ない傾向にある課題を挙げたうえで、「賃上げの課題は労務費の価格転嫁にある。適切な価格転嫁、適正取引の徹底、製品・サービスと労働の価値を高め、認め合う取引慣行の醸成が必要」と訴えた。
続いて、行政と労使が互いに意見を交わし、賃上げの重要性と課題を確認し合った。鰐淵副大臣は大阪府などの「地方版政労使会議」にも出席して、賃上げの機運を高める予定だ。
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