多様化する働き方に対応した労働基準法の見直しを検討してきた有識者研究会の報告書について、厚生労働省は21日、労働政策審議会の労働条件分科会(荒木尚志分科会長)に説明した。早期に着手すべき課題と中長期的に検討を進める事項に分けた報告書で、早期の見直し課題のなかには副業・兼業の労働時間通算における割増賃金規定の撤廃などが盛り込まれている。来年の通常国会に改正法案を提出する場合は、年内をメドとした議論が必要で、次回以降、進行方法や審議日程について厚労省が提示する。
報告書を巡っては、2023年10月に経済学者らによる「新しい時代の働き方に関する研究会」(今野浩一郎座長)が多様な働き方の広がりを念頭に「守る」「支える」の視点で報告書を策定。これを引き継ぐ形で、法律の専門家らで構成する「労働基準関係法制研究会」(荒木尚志座長)が約1年かけて議論を深め、今年1月に報告書を取りまとめた。労基法の意義、現下の情勢、構造的課題を示したうえで、労基法における「労働者」「事業」を整理したほか、労使コミュニケーションのあり方、労働時間法制の課題を明確にして見直しの方向性を示している。
厚労省の説明を受けて、使用者側委員は「働く場所や時間などにとらわれない自律的な働き方を実現する仕組みづくりと、自発的なキャリア形成を支援する仕組みが重要であり、それをサポートする政策が求められている」と強調。「例えば、自発的なキャリア形成に資する副業・兼業は割増賃金規制があるために普及、促進が大いに阻害されている。健康確保のための時間通算規制は残すことを前提に見直しを図ることが必要」と報告書の方向性を評価した。
一方、労働者側委員は「専門的な見地から労働基準法全体の論点を整理してあり、連続勤務日数の制限導入など労働からの解放に関する強化や過半数代表者の適正化などが記されている」との認識を示したうえで、「テレワークのみなし労働時間制創設や副業・兼業時の割増賃金の通算撤廃といった働き過ぎを助長しかねない内容もあるが、分科会では必ずしも報告書を前提に議論するものではない」とけん制した。
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