多様化する働き方に対応した労働基準法などの見直しを検討する厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」(荒木尚志座長)は12日、第14回会合を開き、事務局の厚生労働省がこれまでの議論の要旨を整理した報告書のたたき台を提示した=写真。主要テーマのひとつに挙がっていた「副業・兼業の割増賃金」については、健康確保のための労働時間通算を維持しつつ、「割増賃金の支払いは通算しない制度改正に取り組むべき」との考えを盛り込んだ。たたき台の大筋に対して委員から異論はなく、今後は見直しの背景などを加えながら文言の追記や修正を施し、報告書策定に向けた詰めの議論を進める方針だ。
同研究会は、経済学者らによる「新しい時代の働き方に関する研究会」(今野浩一郎座長)の報告書を引き継ぐ形で今年1月に発足。公労使で構成する労働政策審議会の議論にのせる"前段"となるテーブルで、法律の専門家らで構成した。主に「労働時間法制」「労基法上の事業・労働者」「労使コミュニケーション」などに焦点をあて、約1年間にわたり多面的な視点から考察を重ねてきた。
これまでの議論において「副業・兼業の割増賃金」を巡っては、「働き方が多様化する中で現行制度では実効性が乏しい」との指摘があった。荒木座長も自身の研究を踏まえて「EU各国では使用者が異なる場合にそもそも労働時間を通算しない。通算する国でも健康確保のための通算であり、割増賃金の通算はしていない」との見解を示していた。この日提示されたたたき台では、「厚生労働省のガイドラインで管理モデルなどを示しているが、割増賃金の通算については本業・副業双方の使用者が、本業・副業先の労働時間を1日単位で細かく労働時間を管理しなければならないことなどから負担が重く、雇用型の副業・兼業の許可や受け入れが難しいなどの指摘がある」と記した。
そのうえで、「割増賃金の通算対応が必要ない分、企業はこれまで以上に健康確保に万全を尽くすべきと考えられる」「同一の使用者の命令に基づき複数の事業者の下で働いているような場合に割増賃金規制を逃れることを防止する制度設計が必要と考えられる」――との留意事項も明記した。
報告書たたき台は、「総論」「労働基準法における『労働者』について」「労働基準法における『事業』について」「労使コミュニケーションの在り方について」「労働時間法制の具体的課題について」――の5項目で構成。この日は...
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