帝国データバンクが28日発表した「価格転嫁に関する実態調査」によると、自社商品・サービスのコスト上昇分を価格転嫁できている企業は78.4%(前回2月調査比3.4ポイント増)で、価格転嫁率は過去最高の44.9%(同4.3ポイント増)になることがわかった。しかし、まったく転嫁できていない企業も1割程度あった。調査は7月後半に実施、2万7191社を対象に1万1282社の有効回答を集計した。
価格転嫁できている企業の内訳は「5割以上~8割未満」が20.2%で最も多く、「2割未満」が19.6%、「2割以上~5割未満」が18.6%、「8割以上」が15.5%など。転嫁率の平均は44.9%で、22年12月の調査開始以来、最も高い比率になったが、それでもコスト上昇分の半分以下しか転嫁できていない計算になる。「0%」は10.9%(同1.8ポイント減)と減りつつあるものの、まだ1割以上あった。
転嫁率の高い業種は「化学品卸売り」の65.0%や「鉄鋼、非鉄、鉱業製品卸売り」の63.0%などで、企業間取引を主にする産業で多かった。一方、「医療、福祉、保健衛生」は19.8%、「娯楽サービス」は21.7%、「金融」は25.8%など、公定価格業種や消費者向け業種では転嫁率が低く、業種間の格差が開きつつある。
この結果について、同社は「政府の価格転嫁に対する支援は一定の成果があがっているようだが、現状打破には原材料の安定供給に向けた政策や賃上げの支援を継続しつつ、購買意欲を刺激する大規模な減税など、収入増加につながる多角的な経済施策が必須となる」と分析している。