厚生労働省は9日、企業が従業員の給与を電子マネーで支払う「賃金デジタル払い」の資金移動業者として、スマートフォン決済アプリ大手のPayPay(ペイペイ、東京都)を初めて指定した。昨年4月の「賃金デジタル払い」解禁後、同社など4社が申請。当初、厚労省は4社一斉の指定を検討していたが、1年4カ月におよぶ"長期審査"の結果、1社単独で指定した格好。PayPayは、自社を含むソフトバンクグループ10社の社員約4万人のうち希望者に先行実施し、9月分の給与からPayPayで支給する計画だ。一般の利用者に対しては、年内中のサービス開始で準備を進める。
「賃金デジタル払い」は、企業が労働者の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込む仕組み。2022年秋、「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労基法第24条第1項の省令を改正し、それまで例外として認めてきた「銀行口座・証券総合口座」に新しく「資金移動業者」を加えた。金融庁に登録しているキャッシュレス決済サービス事業者は90社程度で、このうち「賃金デジタル払い」の事業に参入するには厚労相の指定を受ける必要があった。
指定の要件としては、(1)賃金支払の口座残高の上限額を100万円以下に設定。また、上限を超えない措置を講じる(2)破綻時には口座残高の全額を速やかに弁済できる保証スキームを有する(3)不正な為替取引などで損失が生じた場合の補償の仕組みを有する(4)最後に口座残高が変動した日から10年間は、労働者が当該口座を利用できる(5)口座への資金移動が1円単位でできる(6)ATMの利用などで、通貨で1円単位で賃金の受け取りができる。また、毎月1回はATMの利用手数料の負担をなくす(7)業務の実施状況や財務状況を厚生労働大臣に適時報告できる(8)業務を適正かつ確実に行うことができる技術的能力を有し、十分な社会的信用を有する――などが課せられている。
今後、一般向けのサービスが開始されて、企業が従業員に電子マネーで給与を支払うためには、労使協定の締結が必要となる。PayPayは9日から希望する事業者と従業員向けの専用ページを公開する予定だ。
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