雇用仲介事業者が求職者に金品を提供して転職を促す行為に歯止めをかけるため、厚生労働省は24日、職業安定法の指針で規定する「就職お祝い金」禁止の実効性確保に向けた新たな対応策をまとめた。現在、職業紹介事業者に課している「就職お祝い金」禁止を募集情報等提供事業者(求人メディア)にも広げる方針だ。厚労省は同日開かれた労働政策審議会労働力需給制度部会(山川隆一部会長)に具体的な対応策を説明。公労使の意見を踏まえ、今秋をメドに省令・指針の要綱を確定させたい考えだ=写真。
2017年の改正職安法に基づく指針には「適正な宣伝広告等に関する事項」があり、「求職の申し込みの勧奨にあたっては、職業紹介事業者が求職者に金銭等を提供することによって行うことは好ましくない」と記されていた。しかし、「好ましくない」では改善されず、2021年4月の指針見直しで「職業紹介事業者が『お祝い金』、その他これに類する名目で求職者に社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供し、求職の申し込みを勧奨してはならない」と加えて明確に禁止している。
この見直しの際に厚労省は、「金品提供による転職勧奨は労働市場における需給調整機能を歪め、労働者の雇用の安定を阻害する」と強調。「求職の申し込みの勧奨は紹介事業の質を向上させ、それをPRすることで実施してほしい」と注意喚起した。労政審需給部会の議論の過程では、この時すでに「求人メディアにも類似のケースがみられるのではないか」といった指摘があったが、この時は職業紹介事業者を対象にした禁止規定に留めた。
また、直近の動きとして、自民党の「医療介護福祉保育職等の人材の円滑な確保を考える議員連盟」(根本匠会長)が実態把握の一環として職業紹介事業者と募集情報等提供事業者からヒアリングを実施したり、就職「お祝い金」禁止の拘束力強化につながる法整備などについて議論。「健全な業界の発展、そして求職者と採用企業にとってより良い環境をつくる視点で政策の充実を図っていきたい」との考えを示している。
こうした経緯と流れを踏まえて厚労省が提示した対応策は、「法令順守徹底のためのルールと施行の強化」「雇用仲介事業の更なる見える化」「ハローワークの機能強化」――の3つの視点からアプローチ。「法令順守徹底のためのルールと施行の強化」として、(1)お祝い金・転職勧奨禁止を職業紹介事業の許可条件に加える(違反が継続・反復する場合は許可取り消しの対象)、(2)募集情報等提供事業(労働者の登録から就職・定着までの全ての過程)に対しても職業紹介事業と同様の禁止規定を設ける。これらは、医療・介護・保育の3分野を含む事業全体に対する措置となる。
一方で、「お祝い金」に該当しないケースも新たに整理。(1)提供するサービスの質の向上を図るため、サービス利用者からアンケートへの回答を求める場合に抽選による少数者に対して500円程度の電子ギフト券等を提供、(2)イベント来場者を確保するため、転職フェアへの来場及びブース訪問者に500円程度の電子ギフト券等を提供――を挙げた。
「雇用仲介事業の更なる見える化」の視点からは、(1)職業紹介事業者の手数料実績の公開義務化(省令改正で職種ごとの常用就職に係る平均手数料率の実績を人材サービス総合サイトに開示するよう規定)。ただし、各事業者の取り扱い上位5職種に限るほか、定額制の事業者は率に代えて額を開示、(2)募集情報等提供事業者の利用料金・違約金規約の明示義務化。違約金規約の明示は職業紹介事業者にも求める。これらも医療・介護・保育の3分野を含む事業全体に対する措置とする。
「ハローワークの機能強化」については、医療・介護・保育分野での人材確保を支援する専門窓口の体制整備、ハローワークインターネットサービスの操作性の改善などオンラインサービスの充実、求人充足と職場定着のための雇用管理改善の支援などを実施する。これは、医療・介護・保育の3分野が中心となる。
この日の需給部会では、厚労省医政局が「医師確保策」と「看護職員確保の取り組み」、社会・援護局と老健局が「介護人材の現状と対応等」について説明。続いて、需給調整事業課が「雇用仲介事業の現状・概況」、人材確保支援総合企画室が「ハローワークの人材確保の取り組みの現状」を解説した後、再び需給調整事業課が「募集情報等提供事業者によるお祝い金等の提供事例」と「集中的な指導監督結果等を踏まえた労働力需給調整機能強化のための追加的対応(案)」を説明した。これに対して公労使委員は...
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