労働政策研究・研修機構主催の労働政策フォーラム「シニアとフリーランスの新たな働き方の選択肢~労働者協同組合で事業を興す」が19日、オンラインで開かれた。労働者協同組合(労協)は従来の株式会社などとは異なる新しい働き方組織として注目されているが、組合運動と誤解されやすいなど、まだ知名度は低く、普及に向けた課題も多い。
フォーラムに先立ち、同機構の小野晶子理事が「現代的労働者協同組合の萌芽」、厚生労働省の水野嘉郎氏(労協業務室長)が「労働者協同組合の概要と設立状況」と題して解説した。
小野氏は、労協が注目される理由について、労働者の働き方の意識変化や地域の共助が過疎化で先細り状態になっている実態を挙げ、労協を「フリーランスのプラットホーム」「高齢者の生きがい就労の場」「地域活動の事業化」になる可能性を指摘。持続可能な社会への移行に適した形態である一方、小規模事業にとどまらざるを得ない理由を解説した。
一方、水野氏によると、労協法が施行された2022年10月以降、現在まで全国に94法人が設立され、業種はキャンプ場運営、地元産品販売、高齢者介護、家事代行など多種多様。また、株式会社やNPO法人などに比べ、行政認可が不要で設立が容易なこと、地域の課題に取り組みやすいことなどのメリットを強調した。
パネルディスカッションでは識者のほか、好事例の労協として「労協うえだ」(長野県上田市)の北澤隆雄氏、「キフクト」(神奈川県大和市)の佐藤光宏の両氏が事業内容などを説明した。
労協うえだは同市内の地域包括支援センターと連携して、家庭の草取りや庭の手入れ、遊休農地の再生などを通じ、「地域の担い手」としての役割を強めている。キフクトは庭のデザインや樹木の手入れなど、造園・緑化事業を通じて「コモン(共用財)の再生」を目指している。
両氏とも「価値観や目的意識の共通する仲間を集めること」を第一に、多数決ではなく「組合員同士の十分な話し合い」を意識しており、北澤氏は「高齢者の働きがいにつなげたい」、佐藤氏は「若者の働き方の選択肢の一つにしたい」と抱負を語った。