多様な働き方を踏まえた社会保険(厚生年金保険・健康保険)のあり方を検討している厚生労働省の有識者懇談会(菊池馨実座長)は28日、(1)個人事業所に対する適用範囲拡大(2)複数の事業所で勤務するフリーランスやギグワーカーなどの被用者保険――について議論=写真。「働く人がどの事業所に勤務するかによって強制適用の有無が異なっている現状を解消すべき」との課題は認めつつ、現場の事務負担の増大や労働時間の通算・合算の難しさなどから「適用拡大はいずれもまだ早い」といった慎重論が相次いだ。次回は6月11日に会合を開き、報告書の取りまとめに向けた議論を進める。
「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」は、大学教授など16人を委員として2月に発足。政府が進める「年金制度改革」の一環として、パートなど短時間労働者の適用範囲拡大をはじめ、複数の事業所で働く人やフリーランス、ギグワーカーなどの取り扱いを議論してきた。今夏をメドに報告書を取りまとめ、年内いっぱい議論を続ける社会保障審議会の医療保険部会と年金部会に提出する。社会保険料は事業所と従業員の折半であるほか、国民年金・国民健康保険との兼ね合い、雇用を阻む仕組みにならない制度設計など課題が多く、これまで関係者のヒアリングも交えて議論を深めている。
短時間労働者の厚生年金保険・健康保険への加入は、かつてフルタイム労働者の労働時間の4分の3以上働く人に適用され、事実上週30時間以上の人が対象だった。2016年から対象範囲が拡大し、加入要件を(1)週20時間以上~30時間未満に拡大(2)月収8万8000円(年収106万円)以上(3)1年以上の雇用が見込まれる人で学生は除く(4)対象事業所は従業員501人から――などに広げた。また、20年5月に成立した年金制度改革関連法で、「勤務期間1年以上」の要件を撤廃するとともに、22年10月から従業員101人以上に拡大。今年10月からは51人以上の中小企業まで拡大することも決まっている。併せてこの数年、短時間労働者に対する雇用保険の適用拡大やフリーランスに対する労災保険の適用など、「広義の社会保険」の対象外だった労働者への適用が広がっている。
同懇談会では、労働者の就労実態、事業所や医療保険者に与える影響、過去の適用拡大施行時の状況を踏まえつつ、主に「短時間労働者に対する被用者保険の適用範囲のあり方」「個人事業所に係る厚生年金保険・健康保険の適用範囲のあり方」「複数の事業所で勤務する者、フリーランス、ギグワーカーなど多様な働き方を踏まえた厚生年金保険・健康保険のあり方」――を探ってきた。事務局を担う厚労省の保険局と年金局が...
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