日本人材派遣協会(川崎健一郎会長)と連合(芳野友子会長)は12日、働く人の視点に立った新しい働き方の確立に向けて「共同宣言」を締結した。派遣協の川崎会長=写真上左=は「従来から力を注いでいるコンプライアンスの徹底と派遣社員のキャリア形成支援に加え、派遣事業の機能と役割を正しく理解してもらうための広報コミュニケーションに努めている」と強調。連合の清水秀行事務局長=写真上右=は「日常的に労使のコミュニケーションが図れることは極めて重要であり、派遣協との対話を深めながら、派遣労働者や有期雇用労働者が安心して働くことのできる環境づくりに努力したい」と述べ、社会整備に向けた連携を確認した。
「共同宣言」のなかで、派遣協は「労働力の需給調整とキャリア形成支援という重要な社会的機能を担う事業者団体」として、連合は「労働組合のナショナルセンター」として、均等・均衡処遇の実現や人材育成・能力開発などを通じた人への投資に取り組むことを明記。また、三位一体の労働市場改革を踏まえ、派遣協は成長産業への労働移動の円滑化に関する取り組みなど、派遣社員の雇用の安定と処遇の向上を推進。連合は、誰もが多様性を認め合い、支え合う公正な職場と社会の実現を目指すことを盛り込んだ。このほか、賃上げの適正な原資を確保するための「労務費の価格転嫁」でも協力することを申し合わせた。
連合会館で行われた共同宣言には、派遣協の理事ら=写真中=、連合は役員幹部ら=写真下=が顔をそろえた。意見交換では、派遣協側が東京と大阪で開催した派遣先向け無料セミナーや派遣社員のためのキャリア形成支援プログラムなどの活動に加え、賃金を含む派遣社員の待遇向上に関するデータなどを紹介。連合側は、「雇用安定・処遇改善等に向けた取り組み」や「フェアワーク推進局のフリーランス、外国人、若者の取り組み」などを説明したあと、雇用労働を巡る諸課題について活発に意見を交わした。
今年の共同宣言を交わした川崎会長は「働きやすさとやり甲斐のある環境を構築して、より良い未来づくりに向けた歩みを進めていきたい」と力を込め、清水事務局長は「賃金と物価が安定的に上昇する経済社会へとステージ転換する年であり、連携を深めていきたい」と話した。
派遣協と連合は2010年以降、継続的に対話を重ねており、今回の「共同宣言」は7回目。19年には、長時間労働の是正に向けた宣言も締結している。
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