帝国データバンクが26日発表した「企業の潜在賃上げ力分析調査」によると、当期純利益の3割分を人件費に向けると6.31%分の賃上げに相当し、政労使が目標とする「5%以上」を上回るとの結果を得た。賃上げをめぐっては、かねてより内部留保を厚くして人件費に向けない企業行動に批判が出ていたが、この試算である程度明らかになった。
試算は過去1年間に決算を迎えた正社員10人以上の約6万社を対象に、企業の当期純利益を「賃上げ原資」とみなし、人件費に向ける割合と賃上げ率の関係を大ざっぱに計算したもの。人件費増に伴う営業・経常利益、法人税などへの影響は除外した。
それによると、純利益の1割を人件費に充てた場合は2.10%の賃上げ率にとどまった。しかし、3割を充てると6.31%に上がり、中小企業でも5.90%に相当するという結果になった。5割を充てると10.52%になった。
3割投下の場合の賃上げ可能率を業種別にみると、「不動産業」が21.08%でダントツに高く、「サービス業」が8.37%、「卸売業」が8.05%で続いた。
ただ、どの割合で人件費に向けても、賃上げ力が「ゼロ」の企業も17.1%を占め、収益力の乏しい企業もかなりあることが推定される。