厚生労働省が6日発表した毎月勤労統計の昨年12月速報値(従業員5人以上)によると、労働者1人あたり現金給与総額は57万3313円(前年同月比1.0%増)で24カ月連続のプラスとなった。しかし、物価上昇分を差し引いた実質賃金指数(20年=100)は166.8(同1.9%減)で21カ月連続のマイナスという"異常事態"が続いている。
マイナス幅は昨年1月の同4.1%を最大に、その後は2~3%前後で推移。春闘の賃上げ効果の出る5月は一時的に0.9%に縮小したが、6月に1.6%と再び拡大し、7~9月は2.7~2.9%と拡大幅を広げていた。10月から最低賃金(最賃)の大幅引き上げが始まったことから、マイナス幅は2.3%に縮小し、12月はさらに縮小した。
基本給など所定内給与は25万3116円(同1.6%増)で、残業代などの所定外給与は1万9496円(同0.7%減)、ボーナスなどの特別給与は30万701円(同0.5%増)とわずかな伸びにとどまった。
雇用形態別の総額は、正社員が中心の一般労働者の79万3207円(同1.4%増)に対して、パートタイム労働者は11万7784円(同2.5%増)と上昇幅は一般労働者を上回っている。
産業別で伸びが大きかったのは、「その他サービス業」の43万3340円(同6.9%増)、「不動産、物品賃貸業」の77万8096円(同4.9%増)程度。「鉱業、採石業等」の73万8135円(同15.4%減)、「医療・福祉」の49万60円(同2.4%減)など16産業のうち5産業でマイナスとなった。
月間総実労働時間は136.4時間(同0.6%減)。月末の常用労働者数は5290.7万人(同2.0%増)で、パートタイム比率は32.64%(同0.41ポイント増)だった。
この結果、2023年の年間平均(速報)では現金給与総額が32万9859円(前年比1.2%増)で3年連続のプラスとなった。14年から5年連続でプラスを維持してきたが、19年からマイナスに転じ、20年はコロナ禍で2年連続のマイナスに。21年は景気回復で同0.3%増のプラスに転じ、22年も同2.1%増となったものの、23年はプラス幅を縮めた。
所定内給与は25万1309円(同1.2%増)、所定外給与も1万8980円(同0.3%増)のプラス。うち、一般労働者が43万6849円(同1.8%増)、パート労働者も10万4570円(同2.4%増)のプラスだった。
月間実労働時間は136.3時間(同0.1%増)、常用雇用者数は5228.2万人(同1.9%増)となり、パート比率は32.22%(同0.62ポイント増)に上昇した。
しかし、実質賃金指数は97.1(同2.5%減)となり、22年の同1.0%減に続く2年連続のマイナスとなり、マイナス幅も拡大した。食品、サービスなどの物価上昇が同3.8%増と22年を0.8ポイント上回ったため。23年春闘では「大幅賃上げ」を獲得したものの、結果はほぼ帳消しとなり、国民生活の水準は低下したままだ。今春闘でプラス転換できる賃上げが実現できるかどうか、大きな焦点に浮上している。