労働政策研究・研修機構は5日、労働政策フォーラム「仕事と介護の両立~介護離職ゼロに向けた課題」を開き、離職防止に向けた企業の取り組みなどを紹介しながら議論した。
それに先立ち、同機構の池田心豪・副統括研究員が23年度労働関係図書優秀賞を受賞した著書「介護離職の構造」の内容を、介護体験者への調査結果を交えて解説。介護は長期休業を必要とする人は少ないが、必要期間が予想できないことなどから、休業の代わりに短時間勤務などを多用することで離職防止効果が期待できること。ただ、介護ニーズは極めて多様なことから、今後は柔軟な制度運用で「介護不幸ゼロ」を目指すべきことを強調した。
パネルディスカッションでは、先進的な取り組みを実施している大成建設の塩入徹弥人事部専任部長▽介護者サポートのNPO法人「となりのかいご」の川内潤代表▽ケアラーサポートのNPP法人「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」の牧野史子理事長の3人が参加。
家族らを介護する人の"共倒れ"を防ぐには、「介護と仕事を天秤にかけず、優しく介護できる余裕が必要であり、そのためにも地域包括センターなどに早期相談してほしい」(川内氏)、「ケアラーは自分のことを後回しにしがちであり、心身の健康に対するセルフチェックを常時できるための支援が必要」(牧野氏)などの意見が出た。一方、介護の多様性を踏まえると企業がどこまで関与できるかどうかはむずかしく、「多くの社員は介護に直面するまで真剣に考えない傾向があり、研修を義務化して用意してある制度の説明を通じて意識を高めるしかない」(塩入氏)という声もあった。
育児・介護休業法は1995年、介護の緊急対応・態勢づくりを目的に、育児に介護を加えて制定。2016年、介護問題の共通性に着目した改正法ができたが、介護離職防止なども視野に入れ、使い勝手をさらによくするための改正法案が今国会に提出される予定となっている。