日本人材派遣協会(川崎健一郎会長)の「2024年新春セミナー」が31日、三菱総合研究所の山藤昌志主席研究員=写真・上=を招いてリアルとオンラインのハイブリッドで開かれ、生成AIなどデジタル社会の到来に向けて派遣事業者が果たす役割や備えなどを考察した。講演後の質疑応答では、参加者とリアルタイムの質疑応答ができるシステムを導入。急速なテクノロジーの進化を捉えた人材育成や能力開発のあり方について掘り下げた=写真・下。
セミナー開催にあたり川崎会長は「派遣協は今年も、コンプライアンスの徹底による健全な業界運営、成長と向上につながるキャリア形成支援、派遣事業の機能と役割を正しく理解してもらうための広報コミュニケーション戦略を3本柱にしっかりと邁進していく」と強調。そのうえで、事業を取り巻く環境変化として急速に広がり始める生成AIに言及し、「私たちの生活や働き方を大きく変えるような動きであり、派遣事業にどのような影響を与え、いかに活用していくのかを山藤氏の講演を通じて探りたい」と述べた。
三菱総研で政策・経済センター研究提言チーフを務める山藤氏は、「スキル可視化が開く日本の労働市場」と題して講演。同総研の研究データなどを用いてひっ迫する労働需給を予測し、デジタル社会が求める人材要件などを解説。グローバルな視点も交えて要所を伝え、「DXの過程で起こるのは自動化による雇用代替ではなくタスクレベルでの人間とデジタルの融合」と説いた。また、多様な働き方を支える人材派遣業の未来として、「ミスマッチ解消」や「理念の共有・スキル可視化」「テック活用」などをキーワードにアドバイスした。
続いて、川崎会長を交えてディスカッションを展開。リアルタイムに参加者の声を収集できる『Slido』を利用し、講演中に集まった質問を山藤氏に応えてもらう形で進行。テックを活用して闊達な質疑応答をテンポ良く繰り広げ、参加者が理解を深めた。
一方、派遣協は同日、定点調査の2023年度「派遣社員WEBアンケート調査」結果を発表した。それによると、90.3%が女性で、年齢層は50~55歳未満が最多の19.2%、次いで45~50歳未満が18.1%で平均は43.9歳(前年度比2.4歳減)となっている。時給は関東など3大都市圏で平均1697円(同76円増)、それ以外の地域で平均1371円(同23円増)といずれも増加。過去1年間に給与が上がったのは39.3%で、前年から14.4ポイント上昇した。派遣前の正社員経験者は84.2%、パートなどの有期が74.6%(複数回答)。
今後3年間で身に着けたい専門的・技術的なスキルとしては、「基本的な帳簿記録」、「財務諸表の理解・作成」、「会計ソフトの操作」、「税務基礎知識」など、経理財務系のスキルが上位になった。無期契約では、「プログラミング・コーディング能力」が20.7%、「AI・機械学習の基礎知識」が15.5%とDX系のスキルが有期契約に比べて高い結果となった。一方で「特にない・あてはまるものはない」という回答が3割程度あった。
調査は23年9月29日~11月14日に実施、派遣社員2880人の回答を集計した。
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