厚生労働省が28日発表した2023年「賃金引上げ等の実態調査」によると、所定内賃金を引き上げた・引き上げる企業は89.1%(前年比3.4ポイント増)を占め、従業員1人平均の引き上げ額は9437円、引き上げ率は3.2%(同1.3ポイント増)と比較可能な1999年以降で最大となったことがわかった。
定期昇給を実施した企業は管理職で71.8%(同7.3ポイント増)、一般職で79.5%(同5.4ポイント増)といずれも増え、ベースアップについても管理職で43.4%(同18.8ポイント増)、一般職で49.5%(同19.6ポイント増)と大幅に増えた。
賃金の引き上げ率は1999年以降、1%台で推移し、コロナ前の2017~19年は2%に乗ったものの、コロナ禍で再び1%台に下げていた。企業側は所定内給与の引き上げには退職金などへの影響もあることから終始慎重で、賞与の積み上げで対応してきた。しかし、22年から本格化した物価急騰により、実質賃金のマイナスが長期間続いているため、今年は官民挙げて所定内賃金の大幅アップを目指した結果、3%台に跳ね上がった。
企業規模では、従業員5000人以上の引き上げ率が4.0%(同2.0ポイント増)で最高。1000人~4999人では3.1%(同1.3ポイント増)、300~999人では3.2%(同1.2ポイント増)、100~299人では2.9%(同1.0ポイント増)となり、企業格差は拡大傾向にあるとみられる。
引き上げ率の高い業種は鉱業・採石・砂利採取業の5.2%がトップで、情報通信業が4.5%、宿泊・飲食サービス業が4.4%で続いた。最低は医療・福祉の1.7%で、業界を覆う低賃金の弊害が今後、噴出する可能性がある。
調査は7月20日~8月10日に実施、常用労働者100人以上の3620社を対象にし、1901社から得た有効回答を集計した。回答企業のうち、8割ほどの企業は労組がない。