東京商工リサーチが25日発表した「介護離職に関する企業アンケート」によると、介護離職が発生した企業の54.5%で、社員が介護休業など公的支援制度を利用しないまま離職していたことがわかった。制度の周知が浸透していないことも、背景にありそうだ。調査は2~10日に実施、4972社の有効回答を集計した。資本金1億円以上を大企業、同1億円未満を中小企業とした。
過去1年(22年9月~23年8月)に介護を理由に退職者の出た企業は10.1%程度で、離職者数は「1人」が最も多い68.8%。男女別では「男性の方が多い」の51.6%に対して、「女性の方が多い」は37.0%。雇用形態別では「正社員が多い」の65.3%に対して「非正規社員が多い」は26.4%だった。
問題は、介護の公的支援制度が浸透していないこと。退職者の中で介護休業や介護休暇のいずれかを利用していた人は「なし」が54.5%の半数以上に上り、規模別では大企業の36.8%に対して中小企業は58.2%と中小企業の利用が低調だった。
また、両立支援に対する企業側の取り組みについても、「十分」と答えた企業は18.5%に過ぎず、「不十分」が38.1%と多かった。「不十分」の理由(複数回答)については「代替要員を確保しにくい」が62.4%、「自社に前例が少ない」が51.9%と多く、「制度が社員に浸透していない」も31.1%あった。
この結果について同社は「制度の周知徹底は当然だが、介護は待ったなしで、企業と当事者に突き付けられた問題は重い。介護休業への支援制度が根付かなければ、離職は社会全体の問題に広がりかねず、早急な取り組みが必要」と警告している。