労働政策研究・研修機構の労働政策フォーラム「企業で働く人の社会貢献活動と生涯キャリア」が23、27日の両日行われた。
前半の23日は元日本大学法学部教授の稲葉陽二氏が「ソーシャルキャピタルからみる日本の違和感」と題して基調講演。同機構の小野晶子統括研究員が「生涯キャリアと社会貢献活動~パラレルキャリアの可能性」と題して企業や従業員に実施した調査結果を報告した。
稲葉氏はソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を「心の外部性を伴うネットワーク、信頼、規範」と定義。現代日本は国際的に最下位クラスにあり、経済の長期低落が背景にあると解説。小野氏は同機構が実施した調査を基に、パラレルキャリアを「本業(営利)に並行する非営利組織での活動」と定義。その上で、ボランティア活動への参加者の心理傾向などについて詳細に報告した。
27日の事例集では花王キャリア開発部の田中豊氏▽NPO法人藤沢市民活動推進機構理事長の手塚明美氏▽NPO法人「シニア社会学会」運営委員の本田恭助氏がそれぞれの立場から報告した。
田中氏は花王が進めている「シニア社員のキャリア自律支援」の一環として、社員と中間NPO・NGOとの橋渡し状況を説明。手塚氏はまちづくり活動の実態を紹介しながら、日本人の社会貢献に対する意識の高さを強調。本田氏は企業からNPO活動に踏み込むメリットを自らの体験を交えて紹介した。
企業勤務から社会貢献活動へ転換することは、日本の企業人にとって給与、身分、活動内容の違いなどの点でハードルが高く、パラレルキャリアが浸透しているとは言えない状況だ。これについて出席者からは「新しい世界の楽しさを感じるには、最初の一歩が肝心」(本田氏)、「自治体などの相談センターには沢山のNPOが登録されているから、自分の関心に合うのを探しやすい」(手塚氏)などのアドバイスがあった。