農園型やサテライトオフィス型などで障害者と雇用企業の双方を支援する事業者が22日、「日本障害者雇用促進事業者協会」を立ち上げた。障害者雇用をめぐる法整備が拡充し、包摂的社会の意識が広がるなか、多様化する就労ニーズへの対応や企業の雇用主責任を重視した適正な支援などを推進。直面する諸課題に向き合い、業界全体の信頼向上と障害者雇用の健全な発展を目指す。
同協会には事業者6社が参画。同日開かれた発起人会と理事会で理事長に西村賢治氏(スタートライン社長)が選出されたほか、専務理事に本田凛太郎氏、理事には春海貴信氏(UNTOLD社長)、上口裕司氏(クリエアナブキ社長)、村上タクオ氏(サンクスラボ社長)、宮﨑洋祐氏(JSH取締役)、三宅治樹氏(パレット社長)が就いた=写真上。一般社団法人としての登記は、10月中旬を予定している。現時点の業界シェア率は約42%。
厚生労働省が発表した2022年の「障害者雇用状況」によると、民間企業(43.5人以上の企業:法定雇用率2.3%)に雇用されている障害者は約61万人で、雇用数と実雇用率のいずれも過去最高。これまで、法定雇用率達成に向けた取り組みが展開されてきたが、障害者雇用促進法の22年改正には新たに「雇用の質の向上」が企業の責務として盛り込まれた。改正に伴う付帯決議では「雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供するいわゆる障害者雇用代行ビジネスを利用することがないよう、事業主への周知、指導等の措置を検討すること」が決議されている。
発起人会と理事会後の記者発表会で西村理事長=写真下=は、設立の社会的背景や業界への期待、活動方針などを説明したうえで「これまでの福祉政策を含む流れに加え、民間事業者の中で障害者雇用を促進していく流れが太くなることで新しい多様な働き方が広がる」と強調。「法定雇用率達成のみを目的とした企業や事業者に対する賛否の声があることも踏まえ、個社だけでなく業界自身で襟を正して透明性を高め、利用企業と当事者である障害者により多くの情報を発信していきたい」と力を込めた。
同協会では、活動の柱に「雇用促進事業者の法令遵守と適正な事業運営」「雇用主企業への啓発、適切な受託とサービス提供」「障害当事者にとっての価値ある取り組み」――の3つを掲げ、障害者雇用促進法の理念と趣旨に沿った事業の推進や雇用主企業としての責務を理解した適切な障害者雇用の支援、障害当事者それぞれのニーズに合った働き方の実現に注力する方針だ。
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