障害者雇用を促進する法整備が進み、企業入社をはじめ、特例子会社や有限責任事業組合(LLP)、就労支援A型・B型、障害者雇用支援ビジネスを活用した企業のサテライトオフィス型や農園型など、障害者にとって働き方の選択肢が拡充している。こうした中、障害者雇用総合コンサルティングを展開するスタートライン(西村賢治社長)は28日、サテライトオフィス型と屋内農園型について、自社のサポートで働く障害者を対象にした「就業環境アンケート調査」の結果を公表した。それによると、いずれも6割強が「会社の役に立っていると思う」と回答。「仕事を通じた成長の実感」については「頻繁にある」と「ときどきある」を合わせて約8割が成長を実感していることがわかった。
アンケート調査は、任せる業務を切り出して雇用企業の社員と働く「サテライトオフィスINCLU(インクル)」と、障害者雇用で企業の新たな価値を創造する 「屋内農園型IBUKI(イブキ)」で実施。前者は7月3日から同14日までに159人が回答(回収率38%)、後者は1月16日から同31日までに455人が回答(同49%)した。就業から3カ月以上の障害者を対象とし、匿名方式のウェブ版と手書き版で「本人の属性」「就業前と現在の状況」「今後の希望」などを聞いた。
就業の満足度については、5段階評価でオフィス型が「3.96」、農園型が「3.95」で、高評価として「配慮のある形での就労」「心のケア」「いつでも相談できる人がいる」などが挙げられ、低評価としては「サポートの質のバラつき」を指摘するコメントがあった。「仕事が会社の役に立っているか」の問いには、いずれも6割強が「役に立っていると思う」と回答し、「新しい仕事を頼まれた」「給与が上がった」「日ごろからフィードバックしてくれる」などを理由に挙げた。一方、約3割が「わからない」と答え、「やらなくてもよい作業を当てられていると感じる時がある」「結果へのリプライがない」などを理由に挙げた。同社は「オフィス型も農園型もフィードバックの有無がカギとなっている」と分析している。
「仕事を通じて自分自身が成長している実感はあるか」との問いには、オフィス型で「頻繁にある」が14%、「ときどきある」が71%で計85%が成長を実感。農園型は各22%、57%の計79%でおおむね同様の傾向がみられ=円グラフ、双方とも実感する機会として「問題を解決できるようになった」「得意・不得意を把握できるようになった」「人間関係の摩擦が減った」「心身の調子が安定したり、うまくコミュニケーションをとれたりした時」などが聞かれた。同社は「実務の成長だけでなく、コミュニケーション能力の向上やストレスのコントロールなど自身の課題解消も成長の実感として受け止めているようだ」とみている。
また、「現在考えている将来のこと」をたずねたところ、オフィス型で「今の仕事を続けたい」が49%、「今の会社でキャリアアップしたい」が37%、「一般企業への転職」が5%。農園型ではそれぞれ66%、13%、11%となり、現在の仕事での就業意欲に大差はないものの、オフィス型の方がキャリアアップへの意識が約3倍高い。同社では「オフィス型の回答者が30~40代中心なのに対し、農園型は20代中心であり、ミドル層でキャリアアップ思考が高まる可能性がある」とコメントしている。
これらの集計結果について同社は、就業をサポートしている企業担当者と共有してサービス改善と向上に活用する考え。また、回答には身体、精神、知的の障害種別や勤続年数で差異や特徴がみられるため、「認知障害」に対する科学的なアプローチを研究している同社内の「CBSヒューマンサポート研究所」や外部の専門家を交えて更に分析を進めている。
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