技能実習制度のあり方を検討する政府の有識者会議は10日、法務省内で第5回会合を開き、現行制度の廃止を盛り込んだ中間報告書の原案を示した。廃止に伴い、新たに「人材確保」と「人材育成」を目的とする新制度の創設も促した。入国管理法や労働関係法令の違反が絶えず、国内外から人権上の批判も挙がる実習制度の転換を図り、外国人の労働力が貴重な担い手となっている実態に合わせる方針。政府は有識者会議が今秋まとめる最終報告書を踏まえ、早ければ来年の通常国会に関連法案を提出する。
中間報告の原案によると、制度目的と運用実態の乖離(かいり)を指摘して「人材育成を通じた国際貢献のみを掲げたままで労働者として受け入れを続けることは望ましくない」と強調。新制度については、人手不足の分野で外国人の労働が認められる在留資格「特定技能」の制度と連動させ、「対象職種や分野を一致させる方向」で検討するよう求めている。2019年4月に新設された「特定技能」に移行しやすくして、国内で中長期的に活躍できる制度の構築を図る考えだ。
また、技能実習生と受け入れ企業の間に入る「監理団体」については存続させる一方、不適切な就労を放置する悪質な団体を排除する方針で、認定要件の厳格化を盛り込んだ。このほか、現行制度では実習生が同じ職種の企業に移る「転籍」を認めていないため、悪質な雇用主から逃れられずに人権侵害を助長しているとの指摘もあることから、新制度では転籍制限を緩和する方向で検討するよう求めている。
技能実習制度は、開発途上国への技能移転という国際貢献を目的に1993年にスタート。建設業や食品製造業など87種で、最長5年間、働きながら技能を学ぶことができる。出入国在留管理庁によると、技能実習生は昨年6月末時点でおよそ33万人、その半数以上がベトナム人となっている。滞在期間や実技試験の合格によって「1号」から「3号」に分類。2020年度の月の平均支給賃金は「1号」が約17万円、「3号」が20万円余り。人材難が深刻な地方や中小企業でニーズが高い。
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