原油・原材料価格の高騰が続いている中で、東京商工リサーチが19日発表した価格転嫁に関する調査によると、サービス業を中心に約7割の企業が「価格転嫁できていない」と答えていることがわかった。価格高騰は長期化の様相を呈しており、スムーズな転嫁が進まないと、いずれ人件費コストなど雇用面に及ぶ懸念も強まりそうだ。
原油・原材料の価格上昇に伴うコスト増を価格転嫁できているかどうか聞いたところ、68.7%が「できていない」と答え、「5割程度(できている)」が6.4%、「10割」が4.2%、「8割程度」が3.9%と続いた。「できていない」企業を規模別にみると、大企業は73.1%で、中小企業は68.1%と大企業が苦労している様子がうかがえる。
「できていない」企業を業種別にみると、「情報サービス業」が90.7%で最も高く、「その他生活関連サービス業」が90.4%。情報サービスはソフト開発の受託事業などが多く、その他サービスは旅行・ブライダルなどが多い。
今後、価格がどの程度上昇すれば営業赤字になるか聞いたところ、「すでに赤字」が29.1%で最も多く、「11~20%」が24.3%、「21~30%」が14.1%など。「すでに赤字」は繊維・衣服等卸売り、道路貨物運送、輸送用機械器具製造などが多かった。
政府は昨年暮れ、「転嫁円滑化施策パッケージ」を策定し、取引の公正化・適正化に向けた取り組みを公表しているが、同社は「転嫁できていない企業が多いことがわかった。政策の実効的な取り組みが急がれる」としている。
調査は1~11日に実施、3900社の有効回答を集計した。資本金1億円以上を大企業、同1億円未満を中小企業に分類している。