オランダに本部のあるランスタッド社主催の「The Work Life Shift」シンポジウムが13日、日蘭を結ぶオンラインで開かれた。「働き方先進国」のオランダにおける実態を参考に、新型コロナ対応で労働者のワークライフバランスがどう変わり、何が課題になっているかを議論した。
アムステルダム大学のポール・デ・ビア教授が「新しい働き方とワークライフバランス~コロナ禍でオランダが得た教訓」と題して講演した。同教授は1年前にオランダの社会人2400人を対象に実施した調査結果を披露。コロナ前は63%が出社勤務していたが、コロナ中は61%がテレワークとなり、女性のフルタイム労働者の比率が高かった。
ワークライフバランスへの期待効果は女性、子供が小さい夫婦、高学歴、高収入の人々にとってプラス効果が大きい一方、若者、高学歴、公務員などでマイナス効果が大きいなど、ライフステージによって評価が二分されることもわかった。
こうした結果について同教授は「ワークライフバランスのより良い実現のためには個人の選択肢を増やす政策が望ましく、雇用主らによる新しいテレワーク形態の考案が求められる」と解説した。
この後、MPower Partnersの村上由美子ゼネラル・パートナーを進行役に、ランスタッドのポール・デュプイ会長兼CEO▽オランダ社会雇用省のコニー・オルド・オルソフ国際ユニット長▽デ・ビア教授の4人によるパネルディカッションが行われ、今後の働き方について意見を出し合った=写真。
村上氏は、テレワークという多様な就労下の労働生産性評価とその方法について課題提起。これに対してオルソフ氏は、オランダではコロナ前から出社型とテレワーク型を組み合わせた「ハイブリッド労働」が労使に浸透していたが、コロナをきっかけにさらに進めるため、政府に法改正などを提言していることを説明した。
デュプイ氏は、従業員の多くが「ハイブリッドで働きたい」と答えた調査などを踏まえ、就労のコアタイムのない「スーパー・フレックスタイム制」の導入を計画。「要は働く場所ではなく、多様な要望の中でいかに生産性を上げるかが課題」と強調した。
デ・ビア教授は「広い意味で新しい働き方が必要になっている点は社会的な合意ができているが、具体的に生産性をどう測るかはむずかしく、労働管理のやり方も変えなければならないだろう」と改めて課題提起した。