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2022年2月17日

パワハラ防止の努力と困難 労政フォーラムで議論

 労働政策研究・研修機構(JILPT)の労働政策フォーラム「職場環境の改善~ハラスメント対策」が10、17の両日、オンラインで開かれた。パワーハラスメントについては労働施策総合推進法の改正により、20年6月から大企業に適用され、この4月から中小企業にも適用される。企業は防止に向けた義務を負うが、パワハラと「指導」「教育・訓練」との線引きに苦慮する職場が多く、関心は高い。

 10日の研究報告では同機構の滝原啓允研究員が、これまでの「ハラスメント裁判」26例について分析。加害者と被害者の属性、トラブルにおける言葉遣いや頻度などに焦点を当て、26件のうち22件がハラスメントとして認められていることなどを紹介した。

 事例報告では、日本看護協会の森内みね子常任理事▽グラクソ・スミスクラインの長井友宏・人財本部労務部長▽ベルシステム24ホールディングスの楠本三夏・法務・コンプライアンス部マネージャー▽NPO法人「対話の会」の鴨下智法副理事長の4人が各組織の取り組みを紹介した。
 森内氏は、19年に実施した「看護実態調査」の中で、43%の看護職が患者や職場同僚らから言葉や暴力などのハラスメントを受けたこと、被害者の過半数が離職を考えたことなど、深刻な実態を報告した。
 長井氏は、ハラスメント防止に向けた同社の「行動指針」に基づき、毎年の全社員研修などを通じて指針の徹底を図っていることを説明。内部通報の窓口活用などを通じて、ハラスメントに対する高い"感度"を維持している努力を強調した。
 楠本氏は、ハラスメントの大半が法律以前の「非コンプライアンス」案件であることに着目し、法律より広くハラスメントを定義づけた独自の「ハラスメント防止規則」を制定し、相談窓口にエキスパートを配置するなどの体制整備を解説した。
 鴨下氏は、ハラスメントをめぐる従来の「司法=裁判」だけでは根絶は困難との認識から、当事者同士の「対話」を通じて解決、和解を図る「修復的司法」の概念を説明。これまで90件の申し込みがあり、32件で「対話」が成立した実績と、両者の「心の距離」を縮める効果を報告した。

 17日のパネルディスカッションでは、「線引き問題」が主要論点となったが、「寸劇、事例動画、ロールプレーなどを通じて社員に理解してもらう」(長井氏、鴨下氏、ベルシステム24の井木尚洋氏)手法が有効な点を示唆。しかし、「基本的に人が不快になるようなコミュニケーションは是正が必要」(森内氏)、「当事者のプライバシーに配慮して事例を公開する」(長井氏)、「具体事例を積み上げていくしかない」(鴨下氏)など、パワハラ特有の解決のむずかしさを示唆する発言が相次いだ。

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