人材サービス産業協議会(JHR、水田正道理事長)は17日、中途採用の職種別年収や直近の動きがつかめる「転職賃金相場2021」を発表した。それによると、全体的にコロナ前の水準に戻っていることがわかった。同調査は今年で5回目となり、求職者には提示された年収が適正かどうかを判断する目安に、求人企業には人材の確保に必要な条件の参考として活用されている。
JHRに参画する人材紹介事業者と求人情報提供事業者(求人メディア)による業界横断のデータを用いている。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、東海(愛知・岐阜・三重)、近畿(大阪・京都・兵庫)を基本エリアに、今年4月から8月を調査期間とした。各社に共通する件数の多い13職種や労働市場において注目度の高い職種(介護、物流ドライバー、飲食店の店長・店長候補)、基本エリア以外を対象とした「地方企業の管理職」を選定し、人材募集時の年収データから相場を算出。調査・分析には、中央大学大学院(ビジネススクール)の佐藤博樹教授が協力した。
コロナ禍での調査となった前回に比べると、転職市場は全体的にコロナ前の水準に戻っており、20年度に採用を控えていた中小企業も採用意欲が回復。募集時最低年収の中央値が低下して、一昨年度の水準に戻っている。また、IT関連の職種や地方での宅配ドライバーは引き続き人材需要が高く、相場が上昇。特に「IT関連人材などの不足感が強く、未経験者の採用も広がっている」との傾向がつかめた。さらに、全職種で地域間の差が縮小しており、地方企業の管理職も最低額・最高額ともに上昇、介護においても人材確保難から相場が上昇傾向にあることがわかった。
このほか、全職種において600万円以上はマネジメント業務が多くを占め、管理職経験も求められる場合が多い。技術系職種では、高年収層でもマネジメント業務がない専門職である場合が多いこともつかめた。さらに、全職種に共通して当該職種の未経験者は400万円未満となることが多く、経理財務など企業に共通して存在する職種の高年収層では転職回数が多い傾向にある。
同調査は、転職時の最新の賃金相場とトレンドを映し出す指標として活用が広がっているとともに、5年間の蓄積で経年の動向もつかめる。