労働政策研究・研修機構の労働政策フォーラム「多様な働き方を考える~同一労働同一賃金ルールをめぐる現状と課題」が22、26日にオンラインで開かれた。
22日は研究、事例報告をメーンに、厚生労働省の牧野利香・有期・短時間労働課長が基調講演。同機構の渡辺木綿子主任調査員▽成蹊大学の原昌登教授▽イオンリテールワーカーズユニオンの三橋沙織・中央執行書記次長▽エフコープ生協労組の伊藤秀紀・中央執行委員長▽全日本トラック協会の松崎宏則常務理事が事例報告した。
牧野氏は、同一労働同一賃金を定め、昨年から施行された改正パートタイム・有期雇用労働法などの改正点を解説。渡辺氏は、制度に対する企業の認知度について実施した調査結果を発表。原氏は、関連した裁判例から制度の解釈を解説。三橋氏ら3人は各社、業界で制度実現に向けた取り組み例を披露した。
26日のパネルディスカッションでは、イオンとエフコープの取り組みを中心に、ルール策定の実態を議論した。両組織とも多様な働き方と人材の有効活用の観点から、従来の正規従業員とパートなど非正規従業員の待遇格差を縮小する取り組みに成功。成功の要因を、従業員全体を巻き込んだ労使間の理解と納得にあることを強調した。
「組合員同士の納得感が重要」(三橋氏)、「経営側の意思表示と同僚を思いやる気持ちが大切」(伊藤氏)といった発言が相次いだが、労組のない企業も多いことから「さまざまな立場の労働者が集まることが必要であり、正社員のみの労組ではむずかしい」(原氏)との指摘もあった。
同一労働同一賃金制度は、日本では正社員と非正規社員の待遇格差の是正が主要課題となっているが、両者の賃金体系が根本的に異なっていることから、改正法によっても明確な規定を設けることはできず、裁判の積み重ねで各種手当などの是非が決まる「判例法理」に頼る構図となっている。