厚生労働省は16日、2021年版労働経済の分析(労働白書)を発表した。それによると、新型コロナウイルスの感染の長期化によって宿泊・飲食サービス業などの対人サービスを中心とした産業の雇用者数が女性を中心に減少したものの、雇用調整助成金(雇調金)などの政策の下支え効果もあって20年度前半の完全失業率を2.6ポイント程度抑制したと推計される、としている。
推計では、雇調金の受給対象者を潜在的失業者と仮定し、雇調金による抑制効果を2.1ポイント、雇調金や緊急雇用安定助成金などを含めると2.6ポイントの抑制効果があったとした。これがなかった場合は5.5%程度とリーマン・ショック当時の水準まで悪化するとしている。ただ、「相当の幅をもってみる必要がある」と注記しており、「成長分野への労働移動を遅らせる、雇用保険財政のひっ迫といった影響ももたらしている」と負の側面にも触れている。
コロナ下の完全失業率は2%前半から20年後半には3%台に急上昇したが、今年になって3%台を下回り、完全失業者数は200万人台を上下する水準で推移している。雇調金の支出は7月時点で3兆9000億円を超えており、感染者数が減らないことから、当初の打ち切り予定期限が伸び伸びとなっている。
昨年度は新型コロナが労働経済に大きな影響を与えたことなどを踏まえ、労働経済白書の作成を見送っており、今回の21年版は、19年と20年の2年間を対象に分析している。