労働政策研究・研修機構と内閣府による第115回労働政策フォーラムが25、29日の2回にわたってオンライン形式で開かれ、「新型コロナによる女性雇用・生活への影響と支援のあり方」について調査・事例報告とパネルディスカッションが行われた。
同機構の周燕飛・客員研究員が「コロナ禍での女性雇用」と題して課題提起し、今回の事態を「She-cession」(女性不況)と位置付けた。非正規の女性が多く就労している対面型サービス業がコロナ禍に直撃され、失業して家庭に入ったり、休業を余儀なくされる人が多く、それが不況の最大要因だとする説で、各種統計を基に解説した。
東大大学院の白波瀬佐和子教授は、コロナ禍による男女のジェンダー格差は世界的に拡大しているが、日本の場合は元々が賃金などの格差があったところへ、コロナでそれが顕在化したと指摘。内閣府の矢野正枝・男女共同参画局室長、横浜市の植野ルナ・男女共同参画推進協会課長からは調査や相談事例などの報告があった。
また、困窮家庭の支援活動に関わっているNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」の大西連理事長、同「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長が、それぞれの活動を通じた実態を説明した。
大西氏によると、リーマン・ショック当時に比べると、今回は非正規、低収入、住み込み、ネットカフェ生活など、もともと生活基盤の弱い人々にコロナのシワ寄せがのしかかり、女性や若者からの相談や支援要請が急増した。赤石氏にも同様に、「生活基盤の弱い母子家庭の困窮がひどい」と指摘した。
政府や自治体などでさまざまな支援策を講じてはいるものの、PR不足や使い勝手の悪さなどできちんと機能しておらず、困窮者側の生活保護への強い拒否反応などもあり、赤石氏は「転職、職業訓練、副業支援など、どのような支援が有効か迷うケースも多い。また、現在の仕事が不利なことはわかっていても代えられないところまで追いつめられている家庭もある」と現状を訴えた。
大西氏も「今回は企業に対する雇用維持などの政策がメーンで、個人を支援する政策はあまりない。不況が短期で終えるという前提だからと思われるが、もっと使い勝手の良い制度を望みたい」と話した。