厚生労働省が23日発表した2020年度「過労死等の労災補償状況」によると、労災請求件数は2835件(前年度比161件減)で、うち支給決定件数は802件(同77件増)だった。802件のうち死亡件数は148件(同26件減)だった。
労災のうち、脳・心臓疾患の請求件数は784件(同152件減)で、そのうち業務上と業務外の決定件数は665件(同19件減)。決定件数のうち、業務上と認定した支給決定件数は194件(同22件減)となり、認定率は29.2%(同2.4ポイント減)となった。減少の原因として、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う企業活動の停滞が考えられる。
このうち死亡事故も請求件数が205件(同48件減)、決定件数は211件(同27件減)、支給決定件数は67件(同19件減)、認定率は31.8%(同4.3ポイント減)となり、最低水準を記録した。
精神障害の労災補償は請求件数が2051件(同9件減)、決定件数が1906件(同320件増)、支給決定件数が608件(同99件増)、認定率は31.9%(同0.2ポイント減)となった。請求件数は19年度が1983年度の統計開始以来の過去最高だったが、20年度はやや減少。しかし、支給決定件数は大幅に伸びた。
このうち、自殺(未遂を含む)は請求件数が155件(同47件減)、決定件数が179件(同6件減)、支給決定件数が81件(同7件減)、認定率は45.3%(同2.3ポイント減)と減少した。
請求件数で多い業種は、「社会保険・社会福祉・介護事業」の275件(同19件増)、「医療」の209件(同40件増)が群を抜いており、新型コロナへの対応に追われる職員の苦境が反映されていると推測できる。支給決定件数も各79件(同31件増)、69件(同39件増)と倍増した。決定件数を年齢別にみると、例年と同様に最も多いのは「40~49歳」の566件(同63件増)、次いで「30~39歳」の457件(同31件増)で働き盛りが過半数を占めている。また、就労形態別では正社員が1551件(同247件増)で8割以上を占めている。
決定件数の理由では「上司とのトラブル」が388件で最も多く、次いで「仕事内容などの大きな変化」が190件、「パワハラ(嫌がらせ、いじめ、暴行など)」が180件と突出しており、昨年6月に施行されたパワハラ防止法があまり歯止めになっていない実態が垣間見える。
一方、脳・心臓疾患と精神障害を合わせた労災のうち、裁量労働制下の就労者の労災は専門業務型を中心に脳・心臓疾患で決定件数6件(うち支給決定件数1件)、精神障害で23件(同6件)あった。