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2021年4月19日

「賃金デジタル払い」で厚労省が制度設計案を提示、労政審 「労使間の隔たり、委員間の相違がある」分科会長、議論継続へ

 労働政策審議会労働条件分科会(荒木尚志分科会長)は19日、キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「賃金デジタル払い」のあり方について議論を続行=写真。1月以降の議論を踏まえ、厚生労働省が「資金移動業者の口座へ賃金支払いを行う場合の制度設計案」を提示した。課題解消に向けた仕組みや対応などを具体的に盛り込んだもので、公労使が活発な議論を展開したが、一定の着地点を見出せないまま時間切れ。荒木分科会長は「労使間の意見の隔たり、委員間での理解の相違などが依然として残っている。引き続き、議論していきたい」と述べ、厚労省に今後の進め方について検討するよう求めた。

n210419.jpg 「賃金デジタル払い」は、企業が労働者の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込むことを可能にする仕組み。実現するためには、「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労働基準法第24条の省令改正が必要で、現在、例外で認めている「銀行」に「資金移動業者」を加えなければならない。金融庁に登録しているキャッシュレス決済サービス事業者は、2020年12月現在で80社あり、解禁する場合には厚労省が安全性などの基準を設けて指定する。

 同分科会での議論は、1月28日に実質スタートし、今回で4回目。政府は昨年7月の閣議決定で「20年度内の早期に制度化をはかる」としていたが、同分科会の議論は難航している。この日、解禁に向けて動かすことを狙って提案した厚労省の制度設計案の骨子によると、資金移動業者の口座への賃金支払いにおいて使用者が労働者に強制しないことを前提とし、事業者は厚労相が指定する。厚労相は指定を取り消すこともできる。

 指定の要件として、(1)債務履行が困難になった場合に、債務を速やかに保証する仕組みを有している(2)不正取引などが生じた場合に損失補償をする仕組みを有している(3)現金自動支払機(ATM)を利用することで口座への資金移動にかかる額(1円単位)の受け取りができ、少なくとも毎月1回は手数料負担なく換金できる(4)業務の実施状況や財務状況を厚労相に報告できる体制を有している(5)業務を適正・確実に遂行できる技術的能力を有し、社会的信用がある――の5つすべてを満たしていることを挙げた。

 そのうえで、課題となっていた「労働者の同意」や「資金移動業者の指定要件」「指定・取り消し」などに関する具体的な対応方針を示した。制度設計案の議論に入る前に、労働者側は「労働者保護の観点から導入ありき、スケジュールありきは認められないと指摘しているが、厚労省の考え方を聞きたい」と確認。厚労省は「21年度内のできるだけ早期の制度化を目指すものの、提示した議論に資するための設計案にご意見をいただき、丁寧な審議会運営を図っていく」と回答した。

 この日の議論では...


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