製造請負・派遣の業界団体・日本生産技能労務協会(青木秀登会長)と連合(神津里季生会長)は17日、健全な労使関係の確立を促進して派遣労働者・有期雇用労働者の安定や均等・均衡待遇の実現などを目指す「共同宣言」を結んだ。技能協の青木会長=写真左=は「業界団体として社会的使命に真摯(しんし)に向き合い、法の順守と徹底、雇用の維持・確保と就業機会の創出に取り組んでいきたい」と強調。連合の逢見直人会長代行は「技能協と連合の情報交換と連携を深め、有期労働者が安心して働ける職場づくり、社会環境の整備にお互い努力していきたい」と、共同宣言の意義を確認し合った。
労働法制の改正などを巡る技能協と連合の共同宣言は、2010年と16年、20年に続いて4回目。また、長時間労働の是正に向けた共同宣言も19年に締結している。今回は、昨年来の新型コロナウイルス感染拡大が雇用に与える深刻な影響や、テレワークの導入など「新たな日常」に対応するための就業環境の変化。加えて、従来からの懸案である少子高齢化や生産年齢人口の減少などを踏まえて、多様性に応じた就業環境の整備が引き続き重要との認識で一致し、宣言に至った。
共同宣言には、雇用安定措置などが盛り込まれた15年の改正派遣法や20年4月施行の「同一労働同一賃金」の法規定の動きを記したうえで、「労働力の需給調整という重要な社会的機能を担う製造系人材サービス業界の適正な運営などにより、安心して働ける環境を不断に整備していくことが重要」と明記。連合は労働組合のナショナルセンターとして、相互の対話を深めつつ、それぞれの組織または共同で企業・組合員への教育などに取り組むことを申し合わせた。
オンラインで開催した意見交換と共同宣言には、技能協の青木会長ら9人、連合は逢見会長代行ら幹部7人が顔をそろえた。双方が、コロナ禍などに向けた具体的な対応や活動を報告した後、共同宣言に調印。続けて、活発な意見交換を繰り広げた。
今回の共同宣言に際して青木会長は、同一労働同一賃金に関する昨春の法改正に触れ、「会員企業の約9割が労使協定方式を採用し、コロナ禍にあっても派遣社員の賃金が上がった事業所は84.4%。賃金上昇率の平均は5.8%という調査結果も出ており、処遇向上に一定の成果が得られた」と、取り組み状況を説明。「コロナ禍の中で派遣社員をはじめとした従業員の雇用の維持と確保に危機感を持って奔走し、事務局機能の多くを会員企業と従業員へのサポートに傾けている」と述べた。
逢見会長代行は「今年の春闘が佳境に入ってきた。サプライチェーンでつくり出した付加価値は全体で分け合うべきだと主張し続け、格差縮小に向けた動きが進んでいる」としたうえで、「製造部門における請負、派遣を担う技能協の加盟各社も、日本の製造業の付加価値拡大に重要な役割を果たしていることに自信と誇りを持ち、契約の更改にあたってほしい」と、一層の協調を呼び掛けた。