労働政策審議会労働条件分科会(荒木尚志分科会長)は16日、キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「賃金のデジタル払い」のあり方について議論を続行=写真。資金保全や不正引き出しへの対応、換金性、労働者の同意、厚生労働省による監督指導などを巡り、課題や懸念とその対応策などを巡って公益委員、労働者側委員、使用者側委員の3者と事務局の厚労省が活発な議論を展開した。一部報道でデジタル払い解禁に向けた前のめりな論調もあるが、同分科会では払拭すべき課題を丁寧に精査しているのが実態で、労働基準法の省令改正などは新年度以降となる。
「賃金のデジタル払い」は、企業が労働者の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込むことを可能にするもの。実現するには、「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労働基準法第24条の省令改正などが必要で、現在、例外で認めている「銀行」に「資金移動業者」も加えることになる。金融庁に登録しているキャッシュレス決済サービスを行う「資金移動業者」は、2020年12月現在で80社あり、解禁する場合には厚労省が安全性などの基準を設けて選定する方針だ。
今回の議論は、1月28日と2月15日に続いて3回目。政府は昨年7月の閣議決定で「20年度内の早期に制度化をはかる」としていたが、昨年9月に明るみになった「ドコモ口座」の不正引き出し問題の影響などで、そもそも年度内の省令改正は困難とみられていた。これまでの議論で公労使委員から挙がった課題は多岐にわたるが、この日は議論を前へ進めるためにも、厚労省に課題と対応策を整理した具体的な「制度設計案」の作成を求める意見が出たほか、金融庁職員を同分科会に招いて質疑を求める声も挙がった。
「資金移動業者」の口座への賃金支払いを選択する場合には...
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