新型コロナウイルス感染拡大が経済と雇用に打撃を与える中、産業雇用安定センター(産雇センター、太田俊明理事長)と全国社会保険労務士会連合会(全社連、大野実会長)は16日、「失業なき労働移動実現に向けた相互協力に関する共同宣言」を締結した。センターの取り組みを都道府県社労士会が支援し、政府が新設した在籍型出向を対象とする新たな助成制度(産業雇用安定助成金)の活用促進を促す。
新制度は、新型コロナの影響で一時的に雇用過剰となった企業が従業員の雇用を守るため、人手不足が生じている企業との間で在籍型出向によって雇用を維持する取り組みを支援するもので、出向元と出向先双方に助成する。
共同宣言に調印した太田理事長=写真左=は「コロナ禍に伴う一時的な出向ニーズが高まる中、昨年6月に『雇用を守る出向支援プログラム2020』事業を開始して、出向マッチング支援の強化を図っている。既に約1300人の実績がでており、社労士からセンターの利用を勧められたことを端緒にマッチングに結びついたケースもある」と説明し、全社連との連携効果に期待を込めた。全社連の大野会長=写真右=は「失業なき労働移動の取り組みに共感しており、とりわけ全国の中小企業への周知を応援したい。連合会とセンターの宣言締結を契機に、都道府県会が地域に密着しながら協力していく」と意欲をにじませた。
記者会見で、有料職業紹介事業の許可を有しない社労士が在籍出向を仲介して報酬を得るのではないかという懸念があることについて、大野会長は「センターの存在や新制度を伝えるのが役割」と明言。「職業紹介事業にかかわる支援はまったくない。誤解を招かないよう、会員には位置づけや範囲について徹底を図りたい」と、トラブルの未然防止に努める考えを示した。
産雇センターは1987年に設立。47都道府県の地方事務所を通じた全国ネットワークで「失業なき労働移動」の課題に取り組み、設立以来約21万人の就職を実現している。