新型コロナウイルス感染症の第3波に伴い派遣社員に不安が広がっていることを受け、厚生労働省は14日、派遣元の業界団体である日本人材派遣協会(派遣協)、日本生産技能労務協会(技能協)、NEOAの3団体と、派遣先となる経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会の4団体に対して、田村憲久厚労相名で派遣社員の雇用維持を重ねて要請した。新型コロナを巡る業界団体と経済団体に向けた要請は昨年3月から続いており、経済に与えている未曽有の事態を直視すると、現在までのところ、政府の一連の雇用維持対策や派遣元と派遣先の対応で踏みとどまっている。
要請文によると、今年に入って再発令した緊急事態宣言が雇用に与える影響を注視する必要があるとして、「業界としての姿勢を社会に示すため、通常のビジネスモデルの範疇にとどまらない対応が求められる」との認識を示し、派遣元には、(1)雇用調整助成金の特例措置の活用を通じた休業や教育訓練の実施(2)派遣社員の能力を最大限に活用する観点に立ち、派遣先と協力して契約更新を図る(3)契約解除や不更新があった場合でも新たな派遣先の確保を図る(4)派遣法などで定める雇用安定措置義務を適切に果たす(5)社員寮などに入居している派遣社員については、離職後も一定期間は入居を配慮する――などを要請した。
この日は、田村厚労相=写真=が派遣協の田﨑博道会長と阪本耕治副会長、技能協の青木秀登会長と清水竜一副理事長の4氏にオンラインで要請。「契約更新が多くなる年度末を迎え、不更新の多発が危惧される。雇用維持のために具体的な行動をお願いしたい」と述べた。田﨑会長は「更新確認の早期化や派遣先への働きかけなど、雇用維持を最重要の事業戦略と位置づけ、各種取り組みを進めている」、青木会長は「先行き不透明な状況が続くと思われるが、大臣の要請を重く受け止め、あらためて雇用維持の取り組みを徹底していく」と呼応した。
続いて、派遣協が「雇用維持状況の報告」、技能協が「雇用維持・確保に関する取り組み」と題して、約1年間にわたる具体的な対応と現状、年度末の見通し、要望などを伝え、田村厚労相と意見交換した。コロナ克服が期待された今年だが、早々から首都圏など11都府県を対象に緊急事態宣言が再発令され、景気低迷と雇用への警戒感が高まっており、予断を許さない状況が続いている。
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