人材サービス産業協議会(JHR、水田正道理事長)は18日、中途採用の職種別年収や最新の動向がつかめる「転職賃金相場2020」を発表した。求職者には提示された年収が適正かどうかを判断する目安に、求人企業には人材の確保に必要な条件の参考として活用され、今年で4回目となる調査・分析。新型コロナウイルス感染拡大が前年までの傾向に比べてどのような変化や影響を与えたのかも垣間見える結果となっている。
JHRに参画する人材紹介事業者と求人情報提供事業者(求人メディア)による業界横断のデータを用いているのが特徴。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、東海(愛知・岐阜・三重)、近畿(大阪・京都・兵庫)を対象エリアに、今年4月から8月を調査期間とした。各社に共通する件数の多い17職種(経理財務やエンジニア、施工管理など)に加え、労働市場において注目度の高い職種(物流ドライバー、飲食店の店長、介護)を選定し、人材募集時の年収データから相場を算出。調査・分析には、中央大学大学院(ビジネススクール)の佐藤博樹教授が協力した。
コロナ禍での調査となった今回の調べでは、「全体的に求人件数が減少し、特に中小企業を中心に中途採用を見合わせる動きがあった結果、最低年収の中央値が底上げされている」「買い手市場となり、企業側がより能力や経験値の高い求職者を厳選し、即戦力として採用をする傾向が強まり、相場の押し上げにつながっている」「コロナ禍においても、IT関連の職種や地方での宅配ドライバーは需要が高く、相場が上がっている」「一方で、介護においては、依然として人手不足であり、異業種・異職種からの未経験者流入により相場の低下につながっている」といった特性がみられた。
また、これまでと変わらない傾向として「全職種に共通して600万円以上はマネジメント業務が多くを占め、未経験者は400万円未満となることが多い」「経理財務など企業に共通して存在する職種の高年収層は転職回数が多い」などがあった。
JHRは、転職賃金相場を調査・公表することで、求職者が「自分のスキルや経験にあった年収イメージを持てる」「希望する処遇を得るために必要なスキルや経験がわかる」、求人企業は「欲しい人材を獲得するために必要なコストをイメージできる」「在職者に適正な処遇ができているかどうかを確認できる」と、双方にとっての利便を強調。転職時の最新の賃金相場とトレンドを映し出す調査として活用が広がっている。