東京商工リサーチが20日発表した2020年度賃上げに関するアンケート調査によると、今年の賃上げ実施(予定を含む)企業は57.5%で、前年同期の80.9%を23.4ポイント下回り、16年度以降で最大の下げ幅となった。新型コロナウイルスの感染拡大が賃金を直撃している。
規模別では大企業の実施率が65.9%だったのに対して、中小企業は55.9%で10ポイント差が出た。産業別では製造業の実施率が62.8%で最も高く、卸売業の60.8%、建設業の59.9%が続いた。最も低かったのは金融・保険の29.4%だった。
賃上げの内容は「定期昇給」が84.8%で最も多く、「ベースアップ」が30.8%、「賞与増」が23.5%など(複数回答)。賃上げ率は「2%以上~3%未満」が26.7%で最も多く、「1%以上~2%未満」が23.6%。「1%未満」を含めた「3%未満」の企業が57.7%に達した。
好況の長期化と人手不足を背景にした「官製春闘」の定着により、16年度以降は毎年8割を超える企業が賃上げを実施してきたが、今年は新型コロナで流れが断ち切られた形だ。同社は「感染の終息が長引くと、冬の賞与だけでなく、来春の賃上げも厳しい事態が現実味を帯びてくる。可処分所得の下落は消費マインドを冷え込ませ、小売業、卸売業、製造業の業績悪化を誘発し、負のスパイラルに陥りかねない」と警告している。
調査は6月29日~7月8日に実施、1万3870社から回答を得た。資本金1億円以上を大企業、同1億円未満を中小企業と分類している。