東京商工リサーチが8日発表した5月の全国企業倒産は314件(前年同月比54.8%減)、負債総額約813億円(同24.3%減)と大幅に減少した。件数は1964年6月の295件に次ぐ56年ぶりの低水準。4月に対しても件数で57.7%減、負債額で43.9%減と半減する"珍現象"を呈しており、同社は新型コロナウイルスの猛威にもかかわらず、政府の資金繰り支援などによって破綻には至らなかった企業が多かったとみている。
近年の企業倒産は600~700件台で推移しており、昨年9月からは8カ月連続で前年を上回り、特に12月以降は10%以上の増加率が続いていたが、5月で"急落"した。314件のうち、新型コロナ関連は61件あり、この中にはアパレル老舗のレナウンが含まれている。
同社によると、政府の資金繰り支援やリスケ対応に加え、裁判所の業務縮小や手形の不渡り猶予なども減少を後押ししたとみられる。4月から中小企業庁の中小企業再生支援協議会が新型コロナ向けの特例リスケジュール(特例リスケ)を開始し、窓口相談が2カ月で1000件を超えたことなどから、倒産の抑制に効果を発揮したという。
ただ、リスケ期間が最大1年となっていることなどから、今後の景気回復に手間取れば持ちこたえられない企業が続出する可能性もあり、予断を許さない状況が当分続きそうだ。