新型コロナウイルスの感染防止策となる「自粛」が経済と雇用に深刻な影響を与える中、連合は12日、雇用調整助成金の利用促進に向けて全国社会保険労務士会連合会(全社連)に協力を要請。全社連は「都道府県社労士会とともに社会的使命を果たしていく」と応じ、連携強化で一致した。雇調金の申請手続きの簡素化や助成率と上限額の拡充は段階的に進んでいるが、利用実績は低調で、雇用維持のために雇調金の周知と活用が喫緊の課題となっている。
雇調金は、雇用を維持しながら従業員に休業手当を支払う企業に対して国が資金支援する制度。社労士が申請代行業務を担えるが、顧問契約を結んでいない新規事業者やスポットでの依頼も急増しており、申請作業は滞っている。
この日は、連合の相原康伸事務局長=写真上右=が東京都中央区の社会保険労務士会館を訪ね、大野実会長=写真上左=に両組織の協力について要請文を手渡し、非公開で互いの取り組み状況や活用促進の方策などをテーマに会談した。協力と連携を確認した両者は会談後に記者会見し=写真下=、相原事務局長は「連合の労働相談ホットラインには、昨年を大きく上回る相談があり、解雇や雇用契約打ち切り、休業補償の問題などが目立つ。雇調金は長年の制度として定着しているが、十分に手元に届くまでには至っていない」と指摘。「全社連との連携は雇用の糸をつないでいく努力を進めるうえで重要だ」と強調した。
加えて、「助成額の大幅な積み上げが検討されていることは歓迎するが、制度設計ばかりピカピカになっても現実が追いつかないのでは意味がない。雇調金はそれを申請する事業者がこの先の雇用をつなげていく意思の表れであり、重みがある」と述べた。
大野会長は「1社でも多くの事業者と1人でも多くの労働者の雇用を守ることを強く打ち出して、相談業務などを展開している。医療従事者が命がけで現場の最前線で戦っているのと同じように、私たち社労士もこの難局に使命感を持って立ち向かっている」と訴えた。
また、事業者の申請書類に偽りなどがあった場合に、社労士にも連帯責任(社名公表・罰金・5年間の資格停止など)が課される規定が申請代行を拒む理由になっているとの指摘については、「不正防止の方策で、当初は現場の社労士も引っかかりがあった点は否めない。しかし、悪意のある場合の行為が連帯責任となるものと整理して、連合会では困っている事業者のサポートに惜しむことなく取り組んでもらえるよう全国各地の社労士会に発信している」と説明した。
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