ニュース記事一覧へ

2020年3月31日

「選択制2方式」の改正派遣法、4月1日施行 新型コロナで不安のスタート

 抜本改正となる労働者派遣法が、あす4月1日に施行となる。いわゆる「同一労働同一賃金」の一環となる改正派遣法は、「派遣先均等・均衡」か「派遣元の労使協定」のいずれかの待遇決定方式が義務化される。この選択制2方式を巡っては「複雑かつ難解」との指摘が挙がっており、施行後の運用が注目されている。施行初年度は「労使協定方式」が主流となる見通しだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による雇用不安が重なり、事業者は不安を抱えたままスタートを切る。

 改正派遣法について厚労省は、昨年3月末の「業務取扱要領」公表以降、同年7月8日付で「労使協定方式」を採用する際に用いる職種別賃金水準(局長通達)を発令。同8月19日に「労使協定方式」に関する「Q&A」第1集、同11月1日に第2集、同12月26日には「派遣先方式」の「Q&A」を公表してきた。

 「労使協定方式」を選択する場合には、局長通達の賃金水準より同等以上であることが要件。施行初年度の局長通達は「2018年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)」(賃構統計)と、「2018年度職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)」(ハロワ統計)の2種類を基にしている。毎年7月をメドに新たな年度の統計に更新されるが、それでも実質2年前の経済情勢と運用時点の景況にタイムラグが生じる懸念がある。

 一方、2方式のうち「派遣先方式」は、派遣先からの「賃金を含む正しい情報提供」に頼らざるを得ないだけに一定の危うさがつきまとい、行政による指導・監督のあり方が施行後の焦点のひとつになりそうだ。

 今回の改正は、働き方改革関連法の中の「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」に伴うもので、派遣社員の待遇向上が最大の目的。改正法の理解不足で事前対応が立ち遅れている事業者も散見されるため、改正法は業界の新たな淘汰(とうた)の引き金になる可能性が高い。また、各都道府県労働局は、2方式の準備と運用ができずに「偽装請負」に走る派遣事業者や、そうした事業者と契約する発注者の取り締まりを強化する必要もある。


【関連記事】
施行迫る改正派遣法の選択制「2方式」
運用上の「解釈」に注目する事業者(1月27日)


PAGETOP