厚生労働省は6日、新型コロナウイルス感染症に関連する雇用維持に対する配慮を経済団体に加藤勝信大臣名で要請した。要請したのは経団連、全国中小企業団体中央会、日本商工会議所、全国商工会連合会の4団体。
要請文によると、製造業のサプライチェーンに及ぼす影響や外出自粛などによる国内消費が短期的に下押しされ、これが長引くと企業にとって厳しい局面になると予想。そのうえで、(1)雇用調整助成金の対象を感染で影響を受ける全企業に拡大適用し、北海道のように緊急事態宣言を出したところは適用用件を緩和する(2)大学などの就活生に対しては、多様な通信手段を活用した説明会の実施(3)有期契約、パートタイム、派遣労働者らには雇用安定に向けた特段の配慮(4)雇用障害者の感染リスクを減らすため、テレワークなどを促進する(5)小学校などの臨時休校による保護者の所得減少に対応するため、年次有給休暇とは別に特別有給を取得してもらえる助成金制度の活用――など6項目。
雇調金制度については、緊急事態宣言を出している地域の企業への助成率を中小企業は3分の2から5分の4に、大企業は2分の1から3分の2に、それぞれ引き上げた。また、非正規に多い雇用保険の被保険者ではない労働者の休業も助成対象にした。特別有給は2月27~3月31日に取得した休日を対象に、1日1人あたり8330円を上限に企業の大小を問わずに助成する。
今回の要請は、感染対策の強化によって企業活動も大きな規制を受けることから、非正規労働者を中心にした契約打ち切りや雇い止めなどの多発を防ぐため、政府が先手を打ったもの。2018年のリーマン・ショックのあおりを受け、同年暮れに雇い止めされたとされる派遣労働者らが東京・日比谷公園に集まった"年越し派遣村騒動"が大きな社会問題になった前例があり、今回はそうした事態を避けたいとの思惑もうかがえる。