政府は4日、企業に70歳までの就業機会を作るよう努力義務を課すことや大企業に中途採用比率の公表を義務付けることなどを盛り込んだ「雇用制度改革関連法案」を閣議決定。予算案件として、雇用保険法や高年齢者雇用安定法、労働施策総合推進法など6本の改正案を束ねて一括上程する。今国会で成立すれば来年度中にも施行される。
「雇用制度改革関連法案」は、政府が全世代型社会保障改革の一環として推し進めている。主な改正点は、従業員301人以上の大企業を対象に、中途採用の比率公表を義務付ける。21年4月施行予定で、政府は求職者と企業側のマッチングを促す効果が期待できる、としている。大企業に根強く残る新卒一括採用の仕組みを見直し、就職氷河期世代やシニア層の中途採用に加え、経験者採用の拡大を図る。
また、70歳までの就業機会の確保は、企業に(1)雇用による支援として、定年廃止や70歳までの定年延長、他社への再就職の実現(2)雇用以外の支援として、定年後または65歳までの継続雇用終了後にフリーランスや起業した人との間で70歳まで業務委託契約を締結――などを求める。スタートは努力義務だが、将来的には義務化したい考え。
このほか、現役時代に比べて賃金が大幅に下がった60~64歳の高齢者に、その穴埋めとして支給する「高年齢雇用継続給付」を25年度から段階的に縮小する方針だ。これらの「束ね法案」は、3月末までに成立する公算が高い。
一方、政府は同日、労働基準法改正案も閣議決定した。4月施行の改正民法で、働く人の給料の短期消滅時効が廃止されるため、労働者保護の観点から、賃金請求権の消滅時効期間などを延長するとともに、経過措置を講じる。予算外関連の法案で、通常は4月以降の審議入りとなる案件だが、政府は改正民法との同時施行にこだわっており、3月までの成立を目指す。
改正案の骨子は、(1)消滅時効期間を原則5年とし、当分の間は3年間(2)退職金は現行の5年を維持(3)有給休暇、災害補償などの請求は現行の2年を維持(4)改正法の施行から5年経過後に、必要な見直しを講じる(5)経過措置として、改正法施行前の賃金債権は2年とし、施行後の賃金債権は3年とする――など。将来、あらためて見直し議論が始まると、賃金の消滅時効期間は「5年」に延長される見通しだ。
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