ホワイトカラーを中心とした民間職業紹介の事業者団体・日本人材紹介事業協会(渡部昭彦会長)は7日、東京都内で2019年度定時総会を開いた=写真・上。今年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」や改正出入国管理法など、政府が推進する雇用・労働法制の動きを的確にとらえ、求人者と求職者の双方から紹介事業者に対して集まる期待に応えるべく、高い社会的評価を受ける事業者育成に注力することを確認し合った。
総会で、渡部会長は「世界の政治、経済の不確実性が増している環境下にあるが、そこにビジネスの好機があると前向きに捉えていくべきではないか。私たちの業界は人に着目しており、人生100年時代に入った中で社会環境は変わり、企業も盛衰が必至だ」と分析。そのうえで、「あらためて自分のキャリアを考えていく時代に、転職は多くの人におとずれる流れとなっている。雇用形態を含む働き方の多様化も併せ、適材適所を実現する役割の一翼を担う業界として磨きをかけていこう」と呼び掛けた。
本年度は、(1)雇用問題に造詣の深い有識者との連携強化(2)ブロック会・地域活動の活性化と会員拡充、(3)ビジネスモデルが共通する会員同士による課題検討や相互交流の積極展開、(4)適時・的確な情報提供、(5)改定実施する新たな人材紹介コンサルタント資格制度による取得者拡大――などを推し進める。
総会後、安西愈(まさる)弁護士=写真・下左=が「これからの人材紹介ビジネスを考える」、今野浩一郎学習院大学名誉教授が「働き方改革と日本型人事管理のこれから」と題して講演した。両氏が強調したキーワードは「人材の多様性」だった。安西氏は、人口減少と働き方改革を法制面から解説し、戦後定着した労働政策の基本方針の大転換により、「正社員中心主義」の終えんと多様な人材管理の必要性を指摘。「労働は(企業と労働者の)契約」であることを徹底すべきだと強調した。
今野氏は、賃金などの待遇について、「無制約社員(正社員)」と「制約社員(非正規社員)」の構成が、制約社員の増加で人材管理も多様化し、従来の年功賃金体系が困難になった点に着目したうえで、「企業にとっては、真に価値を生む人材の優遇は当然であり、同一労働同一賃金の意味を誤解すべきではない」と述べた。