厚生労働省は11日、毎月勤労統計調査の調査方法に不備があったことを認め、根本匠厚労相が記者会見で謝罪した。不備は長期間に及び、統計自体の修正に加え、同統計に基づいて算出された雇用保険、労災保険の追加支給、2019年度政府予算案の修正など、影響が広がっている。
厚労省によると、同調査は全国の「常用労働者5人以上の事業所」を抽出して毎月実施しているが、500人以上の事業所については全数調査することになっている。しかし、04年から東京都については直近まで全数調査でなく抽出調査しており、昨年10月時点では1464事業所が491事業所と3分の1程度になっていた。
給与水準の高い大企業が集計対象からはずれたことで、統計の数字は低めに出ており、再集計との乖離は平均0.6%。昨年10月時点では「決まって支給する給与」が当初の26万4863円から26万5726円に修正、乖離幅は0.3%程度に縮小している。
ただ、雇用保険や労災保険など、同調査の数字を基に保険金額が決定している公的保険の金額も低めに出ており、厚労省の推計では15年間の対象者延べ約2000万人、金額約567億円にのぼることから、同省は過小分の追加支給を決定、相談窓口を設けて受け付ける。また、19年度政府予算案でも、公的保険を含む同省管轄分が低めになっていることから、国会審議前に修正案を提出する方針だ。
同省によると、統計手法の不備は一部担当者の間ではかなり前から気づいていたものの、全体で共有されることはなく、昨年暮れ、総務省に指摘されて表面化した。しかし、厚労省は問題の存在を公表せず、昨年11月分の発表まで明確な修正を加えることを控えていた。同統計は、政府の各種統計の中でも「基幹統計」と呼ばれる基礎的な統計で、同省が長年にわたって不備を放置してきた責任が国会などで問われることは必至だ。