政府は9日、受動喫煙対策として公共の場での禁煙を罰則付きで義務化する健康増進法改正案を閣議決定した。受動喫煙防止の努力義務となっていた飲食店も原則として屋内禁煙とするが、昨年夏ごろまで政府が目指していた「厳格化」からは例外の範囲が広がり、後退した格好。2020年の東京五輪・パラリンピックまでの施行を目指す。
また、同日までに政府は、精神保健福祉法改正案の今国会への提出を断念する方針を固めた。16年に相模原市で発生した障害者施設殺傷事件を踏まえ、自治体が医療機関と連携・協力して患者ごとに退院後の「支援計画」を作成することなどを盛り込んだが、障害者団体や野党から患者の監視強化につながりかねないといった批判も根強かった。昨年の通常国会に提出され、参院先議で審議入りしていたが、昨秋の衆院解散で廃案となっている。
政府が厳格対応で臨みたいとしていた健康増進法改正案、また、精神保健福祉法改正案は、ともに前厚労相の塩崎恭久氏が強いこだわりを持って進めてきたが、昨年8月の内閣改造による厚労相交代で“変化”。前者は与党・自民党の意向で政府の当初案より緩やかになり、後者は再度の法案提出を断念するに至った。
政府が今国会に提出予定の厚労省関係の予算外法案は6本あったが、これで5本に絞られた。この中には、政府肝いりながら安倍晋三首相の国会答弁撤回や厚労省の不適切な対応が重なって閣議決定が遅れている「働き方改革関連法案」(8法案セット)が含まれており、同法案を巡る与党との大詰めの調整が注目される。一方で、学校法人・森友学園(大阪市)への国有地売却に絡む一連の問題で、国会は3月に入って不正常な状態が続き、週明け12日以降も混迷に拍車がかかる可能性が高い。この動きが「働き方改革関連法案」の与党による法案審査などに影響を与えるのは必至で、政権は厳しいかじ取りを迫られている。
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