パーソル総研と中原淳東大准教授は8日、共同研究の「希望の残業学プロジェクト」を発表した。それによると、月60時間以上の残業をする人の「幸福度」は高いものの、健康リスクは残業をしない人の2倍程度に達することがわかった。
同研究は昨年暮れ、従業員10人以上の企業に勤める正社員・管理職約6000人を対象にネットで実施。日本企業で常態化している「残業」の実態や要因を分析、検証したもの。
業種別で最も残業の多い上位3位は運輸・郵便、情報通信、電気・ガス・熱供給・水道で、職種別では管理職以外では配送・物流、商品開発・研究、IT技術・クリエイティブが多かった。サービス残業の多かった業種は教育・学習支援、不動産・物品賃貸、生活関連サービス・娯楽が上位3位だった。
残業発生のメカニズムとして、中原氏らは「集中→感染→麻痺(まひ)→遺伝」という特徴がみられたと指摘。「集中」は優秀な部下や上司に残業が集中し、「感染」は先に帰りにくい雰囲気が職場にあること。「麻痺」は「幸福度」「就業満足度」は高い半面、自覚症状が薄いため、病気や精神疾患などにつながるリスクも増えること。「遺伝」は若いころに残業時間の多かった上司の下では、部下の残業も長くなる傾向にあるという。
残業の「麻痺」では、60時間以上の残業をしている人は、それ以下の人に比べ、「食欲がない」が2.3倍、「強いストレスを感じる」が1.6倍、「重い病気がある」が1.9倍と高い比率になった。
しかし、「幸福度」は17.5%が感じており、「45~60時間未満」の17%から上昇するなど、「マラソン選手のランナーズハイと似た精神状態にあるのではないか」(中原氏)と分析しており、政府が提出を予定している働き方改革関連法案に盛り込む裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度の導入に一石を投じそうだ。