三菱UFJリサーチ&コンサルティングは11日、都内でシンポジウム「仕事と介護の両立に向けて」を開いた。厚生労働省の委託事業で、介護離職の防止が目的。
中央大学大学院の佐藤博樹教授が「仕事と介護の両立支援として、いま求められること」と題して基調講演した。佐藤氏は、介護休業の取得者が少ないことから、社員の両立支援に取り組んでいる企業はまだ少ないこと。取り組んでいても、効果的な支援がわからず、育児休業などと同様に考える誤った支援をしている企業もあることなどを指摘。社員が実際の介護に直面する前の“事前教育”の重要性を強調した。
好事例として、NTTデータの植野剛至・人事本部労務厚生担当部長と三州製菓(埼玉県春日部市)の斉之平眞梨子・取締役総務部長がそれぞれの取り組み状況を説明し、京都介護医療総研の吉良厚子社長がケアマネジャーの立場から現状と課題を解説した。
植野氏は、同社がフレックスタイム制、裁量労働制、テレワーク制などの働き方改革を拡充しており、2010年からは両立支援に向けた社内セミナーも実施していると紹介。一方で、「社員の介護ニーズを十分掌握しているとは言えない」と大企業特有の課題も挙げた。斉之平氏は、社員300人弱の中小企業で、7割を女性が占める同社の特性を踏まえ、日ごろから社内コミュニケーションの充実に努めており、介護休業などの欠員に備えて担当外の仕事もできるようにする「一人三役制度」を展開していることを披露した。
パネルディスカッションでは、仕事と介護の両立のむずかしさについて、吉良氏が「自分の親だけは大丈夫という気持ちを持ったままの人が多く、事前の準備をつい怠りがちだ」と分析し、「今は全国に地域包括支援センターという“よろず相談所”があるので、気軽に相談してほしい」と述べ、制度の有効活用を訴えた。
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