労働政策研究・研修機構(JILPT)の労働政策フォーラム「子育て世帯の働き方を考える~行政、企業、家庭をつなぐ」が3日、都内で開かれ、日本でも主流となっている共働きについて、新たな課題や可能性が幾つか提起された。
筒井淳也・立命館大学教授が「共働き社会の課題」と題して基調講演し、大石典子・千葉大大学院教授が「母親の非典型的時間帯労働と子どもへの影響」、周燕飛・同機構主任研究員が「労働時間の柔軟性とその便益」と題して報告した。
筒井氏は、「共働き世帯の増加は社会的課題の解決の手段であって最終目標ではない」としたうえで、行政や企業は共働きを前提にし過ぎたサポートでなく、あくまで多様なライフスタイルに応じたサポートをすべきだと解説した。
大石氏は、共働きの増加によって典型的時間帯(平日9~17時)以外の非典型時間帯に就労する女性らが増えているとして、本人の健康・安全面や子供の学業不振などに影響を及ぼす懸念を強調。周氏は、労働時間の短縮と同時に労働時間の柔軟性(WTF)の確保が重要と指摘した。
事例報告として、平野茂・都産業労働局労働環境施策担当課長、関根和子・ライフネット生命人事総務部オペレーションマネージャー、松林大輔・ストリートスマート社長の3人が、それぞれの取り組みを披露した。
後半のパネルディスカッションは、宮本みち子・放送大学副学長をコーディネーターに議論。大石氏は「男性の働き方が変わらない限り、女性の就労時間は伸びないだろう」、周氏は「日本はまだ“総共働き社会”にはなっておらず、ジレンマ状態にある」などと指摘した=写真。
関根氏は「共働きなどでない特定の社員の負担が増えがちであり、公平にシェアできる体制構築に努めている」と自社事情を説明し、松林氏は「クライアント企業の働き方改革をIT面からお手伝いすると、中高年社員の方々の強い拒否反応に遭い、誤解が生じがちだ」と述べ、働き方改革の難しさを浮かび上がらせた。