厚生労働省は16日、2016年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」を発表した。それによると、総合件数は113万741件(前年度比9.3%増)で、そのうち民事上の個別紛争相談は25万5460件(同4.2%増)、労働基準法違反が疑われる件数は20万7825件あった。
総合件数はリーマン・ショック直後の09年度の約114万件をピークに減少傾向にあったが、15年度から2年連続で上昇に転じている。民事上の相談件数はほぼ一貫して増加が続き、16年度は11年度の25万6343件に次ぐ高水準となった。このうち、労働局長による助言・指導の申し出が8976件、紛争調整委員会によるあっせん申請が5123件あり、あっせんの結果、5083件について合意や取り下げなどで処理した。
民事上の相談件数(延べ31万520件)で最も多いのは「いじめ・嫌がらせ」の7万917件で、「自己都合退職」の4万364件、「解雇」の3万6760件などが上位。「いじめ・嫌がらせ」は過去10年で急増している。
個別紛争の解決制度のうち、厚労省の各労働局で実施している総合相談、助言・指導、あっせんは、費用が掛からず、短期処理が可能なことから、トラブルを抱えたサラリーマンらの利用が断トツに多く、9年連続で100万件を超える高止まり状態となっている。
ただ、解雇事案では「解決金」の水準が低いうえ、“相場”も公開されていないことなどから、労働者側に不利な決着となることも多いとみられ、厚労省の有識者会議「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」で水準の設定などを議論、これを受けて労働政策審議会でも審議することになっている。
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