アデコは17日、都内でプレスセミナー「AI(人工知能)時代の働き方」を開き、ゲストスピーカーの柳川範之・東大大学院経済学研究科教授が「テクノロジーの進展と今後の働き方の変化」と題して講演した=写真上。
柳川氏は、AIが産業構造を変化させ、働き方にも大きな影響を及ぼす点を指摘しながらも、「仕事や職業が完全になくなる」「雇用をすべて奪う」といった極端な悲観論を「誤解だ」と一蹴した。現状において、AIは蓄積されたデータによる学習が強みの源泉であり、まったく新しい組み合わせを考えることなどは、今後も人間の方が相対的に有利で、AIと人間は「代替関係」の視点だけでなく、もっと「補完関係」に注目すべきと強調した。
一方、AIの進歩は時間や空間に縛られない働き方を可能にするビジネスチャンスだが、現在の雇用制度(仕組み)は会社などへの出勤が必要なうえ、介護や子育てなどによる“細切れ”の入離職が不利になるといった制約が強く、「新しい働き方を阻害している」とも主張。20年後を見据えた雇用制度や雇用慣行の抜本的改善の必要性を提言した。
続いて、アデコの土屋恵子・ピープルバリュー本部長が「AI時代に求められる人財像および人財育成のあり方」と題して、企業の管理職を対象にしたアンケート調査に基づき講演。AIに対して9割近い管理職が「期待感」を示す一方で、求められるビジネススキルは現在も将来も「対人関係力、対人理解力」が最大の課題で、スキル習得には集合研修やeラーニングといった従来の手法が多かったと報告。講演後には、両氏がそろって参加者たちと質疑応答を交わし、理解を深めた=写真下。