東京商工リサーチは10日、「長時間労働」に関する企業調査結果を発表した。それによると、9割の企業で残業があり、8割の企業で残業削減に取り組んでいるものの、資本金1億円未満の中小企業では受注や賃金減少などの影響が大きく、改善に向けたハードルの高いことをうかがわせた。
残業の有無については、57.3%にあたる7095社が「恒常的にある」と回答、「時々ある」も36.4%の4504社に上った。両者を合わせると94%近くに上り、企業規模を問わず、ほとんどの企業で残業が行われている実態がわかった。
残業の理由は(複数回答)は「取引先への納期や発注量に対応するため」が最多の37.6%を占め、「仕事量に対して人手が不足」の24.7%、「仕事量に対して時間が不足」の21.1%が続いたが、「日常的なことで特に理由はない」も7.3%あった。
残業時間の上限規制などの労働時間短縮が行われる場合、予想される影響としては(複数回答)、「仕事の積み残しが発生」が28.9%あり、「受注量(売上高)の減少」が16.0%、「従業員の賃金低下」が14.1%あった。「影響ない」は11.3%程度だった。
とりわけ、中小企業の場合、「仕事の積み残し」は28.2%、「受注量の減少」は17.6%、「賃金低下」が15.1%に上り、大企業の場合の各31.0%、11.1%、11.1%に比べて受注や賃金への影響の大きいことが懸念されている。
政府の「働き方改革」では、経団連と連合が具体的な残業規制の上限を巡って交渉しており、近く合意に達するとみられる。
東商リサーチでは「過重労働の解消やワークライフバランスの実現は企業規模に関係ない最優先課題。それだけに、大企業より労働時間が売り上げや賃金に直結する中小企業の実態をより正確に把握し、実のある政策実現に向けた問題提起と解決に結びつけることが急がれる」とコメントしている。
調査は2月中旬に実施、1万2519社から有効回答を得た。