雇用形態にかかわらず同じ仕事に同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」のあり方について検討している有識者検討会(柳川範之座長)は16日、厚生労働省で第11回会合を開き、不合理な待遇差を例示するガイドラインの「考え方」や「位置づけ」などに関する中間報告をまとめた。賃金を決めるルールの明確化を強調したうえで、「ガイドラインの制定・発効にあたっては、適切な検討プロセスを経ることが望ましい」と記した。週明けの20日には政府の「働き方改革実現会議」(議長・安倍晋三首相)がガイドライン案を公表。今後、同検討会がそれを踏まえて労働関係法の改正などについて議論していく予定だ。
今年3月に発足した同検討会は、有識者7人で構成。9月末まで現場実態を踏まえながら多面的な角度から精力的に議論を重ねてきた。同じ9月下旬に政府が「実現会議」を立ち上げてからは、2カ月以上にわたり会合が止まっていたが、12月に入って2週間で3回開催、急ピッチで「考え方」に関する中間報告にこぎ着けた。
同検討会の議論が“再開”されて以降、実現会議で策定しているガイドライン案が政府筋からマスコミを通じて断続的かつ具体的に“先行報道”される状態が続き、同検討会と同会議の両者の存在と役割、関係性が分かりにくい格好になっていた。現時点においても、9月末以降の経緯に釈然としない部分があるのは事実だ。
こうした政府の進行と思惑に関する検証は別の機会に譲るとして、今回の同検討会の中間報告は「前のめりではない、丁寧な内容」となっている。例えば、ガイドラインの位置づけについては、「本来、賃金等の決め方については、当事者である労使の決定に委ねるべきものである。しかし、特に非正規社員の待遇改善を含めた格差是正は大きな社会的課題だ。また、現行法においては、労働契約法20条やパート法8条によって『不合理』な格差を設けることは認められないが、この不合理性は裁判所によって最終的に判定される規範的概念であり、合理性・不合理性の判断が簡単でない場合も少なくない」と整理。
「そこで、ガイドライン等を通じた、国による対応が有効となる余地があると考えられる。本検討会では、つくられるガイドライン『案』は、第一義的には、現行法の解釈を明確化するものと位置づけてきた。しかし、現状ではガイドライン『案』の法的位置づけは不明確であることから、ガイドライン『案』は現時点では効力を発生させるものではない旨をきちんと周知すべきである」と、現場の混乱回避を明記している。
また、今回の中間報告で特筆されるのは、委員7人の意見集約が難しかった点などを補強、課題提起する形で、各委員による「専門的見地からの意見」と関連資料を合わせて公表した点にある。こうした対応は、あらゆる国の政策分野で「勢い優先、途中で頓挫」という過去の幾多の経験則に照らすと、極めてタイトな時間的制約があった中、次の展開につながる注目に値する報告内容・手法であったと言える。
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